September 18, 2020

その道は一本 ~柔道が世界をつなぐ~ 早川憲幸さん

女子70キロ級ジュリ・アルベアル選手はリオ五輪銀、ロンドン五輪銅、世界選手権も3度制したコロンビアの強豪選手。彼女のコーチボックスに座るのは、彼女の長所を生かした指導と徹底した研究で彼女を支える早川憲幸さん。ジュリ選手が得意とするクロスグリップは、貧しく柔道衣がない環境の中で生まれた工夫の賜物であると語ります。第6回の今回は、どんな環境の中でも「柔道が楽しくて仕方ないんです」と顔をほころばせるコロンビアの早川さんにお話を伺いました。
 

――柔道を始めたきっかけは?

父が埼玉県で武徳館早川道場という町道場の指導者をやっておりまして。物心つく前から生活の中に柔道がありました。柔道はとにかく楽しかったですね。勝てないなりに友だちも多く作れましたし、何より父親が柔道の先生ですから、習い事というよりはコミュニケーションの手段だったんです。

――埼玉栄高校、明治大学と強豪チームに進み、全日本学生体重別選手権で2年連続3位入賞。

本当に勝てなくて(笑)。でも、弱いなりに柔道が好きで凄く研究をしていたんですよ。体ではなかなか表現できないのですが、考えること自体が凄く好きでした。特に相手の研究にはのめりこみました。大きな大会を観に行ったりしてもこの選手にどうやって勝とうかと常に想像していました。自分が出られるわけではないんですけどね(笑)

――海外に出たきっかけは?

小さい頃から柔道を通して海外に行きたかったんです。中学生のときに、野茂英雄選手がメジャーリーグで活躍するのをテレビで見て、とても眩しく見えた。スポーツで海外に行くって素晴らしいなと。大学を卒業した後にもいろいろなツテを頼って海外に渡る道を探していて、冨田弘美先生(※当時プエルトリコで指導)が明治大学にいらしたときにも「海外に行きたいんです」とお願いをさせていただきました。それで2年ほど経った頃にコロンビアを紹介していただけました。2009年の1月に現地に渡って、いまも指導を続けています。実はコロンビアという国も知らなかったのですが、海外に行けるならどこでも良かった。事前にスペイン語を学ぶこともなく、決まったからにはとすぐに日本を出ました。

――コロンビア柔道協会との契約での渡航となりました。着いてみていかがでしたか?

柔道場なんてないのではと勝手に思い込んでいたんですが、畳もありましたし、柔道やっているという人も何人かいて、悪くない環境だと思いました。コロンビアにはナショナルチームというくくりはなく、赴任した地域の人を教えるという形。下は5歳くらいから上は60歳くらいまで年齢も職種もいろいろ、一般のクラスの中で指導を始めました。国全体での登録者数は5000人ほど。個人経営の町道場はなく、市や県などの自治体がクラブを運営しています。人気は…。少しずつ増えているとは思うんですが、なかなか浸透していかないですね。柔道を始める入り口がすごく狭いんです。いとこがやっていたとか、誰かの紹介で始める方がほとんど。純粋に柔道をやりたいというきっかけで始めるケースはほとんどないと思います。また、日本では柔道は教育というスタンスがかなり認知されていますが、こちらのイメージは純粋に「スポーツ」ですね。