September 18, 2020

【女子柔道振興委員会】JJ Voice No.5 緒方亜香里さん

プロフィール
緒方 亜香里(おがた あかり)1990年熊本県生まれ
医療法人社団 了德寺会 両国みどりクリニックで柔道整復師として勤務
講道館柔道女子五段
主な戦績:
 2011年 世界選手権大会(パリ)78㎏級 2位
 2012年 ロンドンオリンピック出場 78㎏級
 2013年 皇后盃全日本女子選手権大会 優勝

 この度は、この様なご依頼をいただきまして、大変光栄に思っております。また、この様な大変な状況にも関わらず、日常の生活を支えてくださっている皆様にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。皆様の支えがあって私たちの生活が成り立っていることを日々痛感しております。早く平和で安心した生活が送れるようになる事を願っています。
 この度は選手の方々、柔道を愛する皆様が、練習をはじめ試合等が出来ない状況が続いており、大変辛い事とお察し申し上げます。世界中がコロナ禍の中、私が伝えたいことは、何事も諦めないという事と、自分を信じてひたすら今できる事をやる、という事です。言葉で言うのはとても簡単で、軽く感じますよね。しかし、今は世界中のアスリート、柔道家が同じ状況で苦しんでいると思います。どうしていいのかも分からない、この状況がどのくらい続くのかも、誰も分かりません。そんな中でも、今、自分にできる事を考えて精いっぱい全力で取り組むことが、明るい未来へ繋がる一番大事なことではないでしょうか。
 そんな私は、2018年の講道館杯の試合を最後に、柔道選手としては一線を退きました。中学校から柔道を始め、16年間選手として柔道をやってきました。現在は国家資格である柔道整復師の免許を取り、了德寺グループの整形外科で働いています。また、以前から興味のあった、同じ国家資格である鍼灸師の資格を取るために、現在も専門学校に通っており、仕事と勉強で慌ただしい毎日を送っております。
 今思うと、なぜ自分がオリンピックに出場できたのかとふと考える事があります。今の職場の方からも、「緒方さんってよくオリンピックいけましたよね。本当に努力したんですね。」と言われます。まさにその通りで、本当に不器用で一回言われたところで理解できません。しかし、それは仕事では通用しません。私たち柔道整復師は患者様方の大切な身体を扱っております。失敗はできません。仕事が始まる前や、終わった後など常に練習に練習を重ねています。例えば、骨折で来られた患者様も、自分で受け持った方なら当然ですが、ほかのスタッフが受け持った患者様でも、「なぜ」「どのように」「どうして」固定や包帯を施したのかを考えます。怪我をされて来られる患者様に少しでも不快な思いをさせたくありません。その様なことを考えながら、日々奮闘しておりますが、柔道を引退し、柔道整復師として働いて1年4ケ月の今、この仕事にとてもやりがいを感じています。
 実はこの柔道整復師という資格を取る時もかなり勉強しました。私は中学から柔道を始めたと申し上げましたが、それからというもの柔道一直線で勉強にはほとんど力を注いできませんでした。もっと勉強すればよかったと思っています。そんなことを柔道整復師の資格を取るにあたって痛感しました。どう勉強していいのか、勉強の仕方すら分かりませんでした。中高大学、実業団は柔道の成績で入ったものですから、勉強には本当に苦労しました。
 しかし私はやると決めたことは、何事も最後まで貫き通さないと気が済まないタイプで、勉強で分からないことも先生に聞いたり、自分で調べたり、納得、理解できるまでとことん追求します。国家試験前は一日12時間程勉強していました。国家試験受かった日には本当に嬉しくて、頑張って良かったと心の底から思いました。これは柔道でも同じようなことが言え、努力すれば結果はおのずと付いてくるものだと思っています。ただ、国家試験は対ペーパー(紙)ですが、柔道は対人間なので、必ず勝てるとは断言できませんが。しかし何事においても諦めず頑張れば結果は出ると、私は言いたいです。私は柔道の方でも相当不器用でセンスのかけらも無かったものですから。それでもオリンピックまで行けたのは、あの時の私はわき目も触れず一直線にやっていたのだな、と改めて感じます。
 そしてもうひとつ言いたいのは、自分はオリンピックに出るのだと信じていた事です。本当に純粋に何の迷いもなくオリンピックに出るものだと思っていました。むしろ、自分以外誰がいるのだろうと思っていました。柔道は本当にきついですよね。身体も精神も相当追い込まれます。練習や試合でいつも先生には怒られていました。練習量も相当の量だったと思います。いつも大量の汗と鼻水と少しの涙で、元から悲惨な顔がさらに見るに堪えない顔になっていたと思います。しかし辞めたいとは一度も思いませんでした。だってオリンピックに出るのはこの私ですから。今思うと、この不器用さでよく自分の事を信じられたなと思います。これは私の唯一誇れるセンスなのかもしれませんね。
 さて、私は本年度、また国家試験を控えております。今回は仕事しながら試験の勉強をしているので本当に辛いです。またコロナウイルス蔓延の状況下ですので、学校に登校できずオンライン授業を受けています。正直、重要な一年にこのような前代未聞の状況は、不安で仕方ありません。しかし辛くて不安なのは私だけではありません。世界中の人がこの困難な状況と戦っています。今自分にできる事、やらなくてはならない事を考えてしっかりとやるしかありません。自分の事を信じ、どんな状況でも諦めず、今の自分にできることに全力で向き合ってみてください。
 鍼灸師を無事に取ることができたら、柔道のトレーナーになる事が今の私の目標です。これまでのアスリートとしての経験、また治療家としての臨床経験、さらに女性であるという点を活かし、次のステージで活躍できるよう、努力を続けています。この先もいろんな困難があるでしょう。ですが、柔道で培ってきた強い土台がある。だからどんなことも大丈夫だと、強く思います。
 「柔道」を通じて、皆様にこの執筆へ目を通していただけた事、このような場で出逢うことができたことを大変嬉しく思っております。そして少しでも力添えできたら良いなと思います。お互い頑張りましょう。

施術中の様子


次回は、筑波大学時代に指導を受けた
増地(旧姓:立野)千代里さんが登場します。