October 20, 2020

【女子柔道振興委員会】JJ Voice No.2 田知本遥さん

プロフィール
田知本 遥(たちもと はるか) 1990年富山県生まれ
筑波大学体育系非常勤研究員  講道館柔道女子五段
主な戦績:
 2012年 ロンドンオリンピック 70㎏級 7位
 2016年 リオデジャネイロオリンピック 70㎏級 金メダル

 こんにちは。田知本遥です。私は2012年ロンドンオリンピックと2016年リオデジャネイロオリンピックに出場し、2016大会では念願のオリンピックチャンピオンの夢を叶えることができました。その後2017年に第一線からは退き、同時に筑波大学大学院の社会人を対象としたコース(※)に入学しました。本投稿の第一回目を務められた筑波大学山口先生から「こういうのがあるよ」と声をかけていただき、新しい刺激を求めていた私は入学することを決意しました。実はそれまでの人生の中で2度大学院を勧められたことがありました。東海大学在学中と卒業する時の2度です。人生でこんなにも「大学院」というキーワードに直面するということは「行きなさい」ということなんだなぁとも思い決意することができました。社会人を対象としたコースでしたので、ほとんどの方がすでに社会に出て教師や弁護士、広告会社など様々な職種で活躍されている方ばかりでした。そういった方と肩を並べて学べたことは知識だけでなく幅広い人脈を形成することができとても新鮮な時間を過ごせました。また、指導教員であった筑波大学菊先生や山口先生のおかげで、2年間の集大成として提出した修士論文では専攻長賞をいただくことができました。オリンピアンであるということとは関係なく評価して頂いたと聞いた時は胸にこみ上げるものがありました。
 そして2年の歳月を経て無事修了し、今年2020年4月からはJOCの海外研修制度を利用させてもらい長期海外研修に行く覚悟を決めていました。この海外への挑戦は、高校生の頃に初めて国際大会で海外に行った時から興味を持っていました。それは柔道や試合を通して沢山の国の選手と知り合ったことで、その国のことや他の国においての柔道の環境などを更に知りたいと思ったからです。その挑戦をこの節目である年に挑戦しようと思いました。節目の年というのは、今年の8月で30歳を迎えます。ロンドン大会は22歳、リオ大会では26歳とこれまで4年毎に大舞台を経験させてもらっていましたが、ちょうどその同じ4年のサイクルにあたるのが今年2020年になります。残念ながら今年あるべきだった東京大会は延期となりましたが、それらが決定する前から私個人としても新たな挑戦の年にしたいと考えていたのです。
 悪戦苦闘しながらも長期滞在のビザも取得することができ、移住のための手続きや荷造りなども始めていました。しかしながら、このコロナ禍によって予想していた未来とは異なり延期となってしまいました。世界中で沢山の方が予期しない年になってしまいましたが、私もその中のひとりとなりました。正直、ものすごく落ち込み、簡単に切り替えられるものではありませんでした。ただ、ピンチをチャンスに変えようとする姿勢は失ってはいけないと思い、見えないゴールの日々を懸命に過ごそうとしました。そんな中ふと、現役の時と似ているなと感じることもありました。現役の時も、山あり谷あり谷あり・・な日々でしたが先が見えない中でもその日のベストを懸命に尽くしていたことを思い出しました。
 そこである日、語学勉強の他に、大学院に通っていた時にそこで興味を持った分野の論文をブラッシュアップしてみようと思いました。これらは自分が主で取り組んでいることがうまくいかなかった時に、別の何かに没頭できる時間があるというのはとてもいい影響を与えることを思い出させてくれました。柔道を競技としてやっているうちは、それ以外のものは余計なことだと、むしろよそ見をしていると思い込んでいた時期もありました。ただ、大学を卒業した22歳の頃、軽いスランプに入りました。柔道だけの生活になってしまっていたからです。学生の時に授業と部活動を両立するのは大変ではありましたが、脳がうまく切り替えられて、程よいオンとオフができていたのだと思います。それが柔道だけに没頭できる生活を得たがゆえに頭の中がパンクしてしまったのだと思います。
 つまり、今精一杯柔道に打ち込んでいる皆さんに、今のうちから沢山の物事に触れて欲しいなと思います。それは、決して競技後だけでなく、競技中にもプラスに働くことに間違いないと思うからです。

※筑波大学人間総合科学研究科スポーツ健康システム・マネジメント専攻(社会人対象)

大学院修了式


次回は、田知本遥さんとロンドン、リオのオリンピックに出場し、
大学院では同期生であった中村美里さんが登場します。