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【女子柔道振興委員会】JJ Voice No.12 小林咲里亜さん

プロフィール

小林 咲里亜(こばやし さりあ)1987年兵庫県生まれ
帝京科学大学幼児保育学科
講道館柔道女子四段

主な戦績:

2005年 全国高校総合体育大会 48㎏級 優勝
2006年 全日本選抜柔道体重別選手権大会 48㎏級 第3位
2006年 ワールドカップ(ソフィア)48㎏級 優勝

こんにちは。小林咲里亜と申します。私などがこのような機会をいただいて良いものかと恐縮していますが、これまでの柔道人生についてお話させていただきたいと思います。
私が本格的に柔道を始めたのは小学校4年生の時、厳しい父の徹底的指導と恩師達のおかげで中学、高校で日本一になることができ、念願の日本代表入りを果たしました。もっと世界大会で活躍したいという強い想いをもち東海大学に進学した矢先、腎臓付近に5㎝ほどの腫瘍が見つかりました。検査の結果、症例が少ない病気(がん)だと聞き、目の前が真っ暗になったことを覚えています。治療前には副作用として脱毛や頭痛、吐き気、妊よう性低下などの様々な症状が出る可能性があるという説明を受け、3度の手術、抗がん剤、放射線治療を行いました。大学1年だった私は不安を抱えながらも1年間治療に専念することになりました。柔道への未練の気持ちを残したまま入院生活が始まり、さらに自分がどんどん弱っていくことを受け入れられずにいました。加えて、味わったことの無い辛い治療の日々に何度も涙しました。しかし、これまで自分自身と向き合い闘ってきたおかげなのか「自分に負けたくない」という想いが沸々と湧き上がり、前向きな姿勢で治療に臨むことができました。柔道は私の命の恩人です。競技者としては太く短い人生でしたが悔いは一切ありません。
退院して体力が回復し始めた大学3年から大学付属の少年柔道の指導に携わらせてもらえることになりました。久しぶりに柔道衣の袖を通した時は感動しました。病気になる前は毎日柔道衣を着ることが当たり前の日々を送っていましたが、柔道衣を着て稽古できるという幸せを身に染みて感じました。そして、再び柔道の持つ「人間を成長させる力」に魅了され、柔道の指導に携わりたいと思うようになりました。
現在は帝京科学大学で柔道部コーチをさせていただいています。柔道を通して人生を学べるような環境を構築し学生たちをサポートしていきたいという思いで指導していますが、上手くいくことばかりではありません。そこで、自分自身の視野を広げたい、より効果的な指導を展開していきたいと思い、5年前に日本体育大学大学院体育科学研究科に入学し、コーチング学を学びました。そこでは、他競技の方々と交流を深め意見交換を行いながら、声掛けやフィードバックの方法について研究を行いました。この2年間は自分にとって人生で一番勉学に励むことができたと思います。
その後、28歳で結婚。治療の影響により妊よう性の低下が懸念されていましたが、ありがたいことに子どもを授かることができました。自分一人だけでの力では大学業務と家事育児の両方に100%のエネルギーを注いでいくことが難しいのが現状です。しかし、大学(職場)の理解や周りのコーチ陣のフォローもあり、活動することができています。また、全日本柔道連盟や全日本学生柔道連盟においては子育てママへのサポートとして大会会場にてキッズルームを設けていただき、女性指導者や審判員も柔道に関わりやすくなってきたと感じています。子どもを連れての指導は充分にエネルギーを注げない時もありますが、チームビルディングの観点からみると、子どもの存在が良い効果を発揮してくれていると感じる場面も多くあります。今だからこそできる指導方法を実践し、先輩ママ柔道家たちのように自分が女性指導者のロールモデルとなることで今後柔道に関わる女性が増えるきっかけになればと思っています。人とのご縁と奇跡に感謝しながらこれからも命の恩人でもある柔道の魅力を伝えていきたいと思っています。
世界中が新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、窮屈な生活を強いられているかと思います。今は根っこを太く、深く、広く成長させ、大きな花を咲かせる準備をする時期だと思います。柔道衣を着られることに感謝し、みんなで柔道界を盛り上げていきましょう!!

2人の子ども達と

 

次回は、小林さんが病からの回復後、少年柔道の指導者(学生コーチ)としての
活動に導いてくださった、中西美智子さんです。

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