
プロフィール
上野 順恵(うえの よしえ)1983年 北海道生まれ
中華民國柔道總會ナショナルチームコーチ
講道館柔道女子六段
主な成績
2009年、2010年 世界選手権大会 63㎏級 優勝
2010年 アジア競技大会 63㎏級 優勝
2012年 ロンドンオリンピック 63㎏級 第3位
活動歴
2002年~2026年 三井住友海上火災保険株式会社女子柔道部
2016年~2024年 全日本柔道連盟シニアコーチ
2026年~ 中華民國柔道總會ナショナルチームコーチ
皆さま、はじめまして。池野さんからご紹介いただきました上野順恵と申します。このたびは、JJvoice執筆の機会をいただき、ありがとうございます。
池野さんとの出会いは、ジュニア時代の強化合宿でした。力強い柔道スタイルとは対照的に、とても女子力が高く、そのギャップが印象的だったことを今でも覚えています。当時、内気だった私にも気さくに話しかけてくださり、とても嬉しかったです。今では飲みに連れて行っていただくなど、公私ともに仲良くさせていただいております。東京に帰った際には、ぜひサロンにもお邪魔させてください。
私は柔道一家に生まれ、父の指導のもと3歳から柔道を始めました。小学生までは体が細く、周囲から「柔道は向いていないのでは」と言われるほど弱い選手でした。性格もおとなしく、小学生の頃はいじめを経験したこともあります。しかし、柔道を続けることで心身ともに鍛えられ、少しずつ内気な自分を克服していきました。そして、献身的に支えてくれた両親のおかげで、徐々に試合でも結果を残せるようになりました。
高校では、恩師である中野政美先生のご指導のもと、「限界を超えろ」というスローガンを掲げ、仲間とともに厳しい稽古に励みました。毎日男子選手と乱取りを重ねることで、忍耐力や勝負勘が養われたと思います。そして高校3年生の時、全日本体重別選手権大会(現・講道館杯全日本体重別選手権大会)で初優勝を果たし、シニア強化選手に選出されました。
高校卒業後は、姉と同じ三井住友海上火災保険株式会社に入社しました。慣れない社会人生活に加え、世界トップレベルの先輩方との練習は想像以上に厳しく、毎日泣きそうになるほど苦しい日々でした。定期的なミーティングでは、元監督の柳澤久先生から、世界で勝つための考え方や社会人としての在り方を学びました。姉や偉大な先輩方の背中を追いながら、次第にオリンピックを強く意識するようになりました。
しかし現実は甘くありませんでした。20代前半は世界代表にもオリンピック代表にも選ばれず、柔道を辞めようかと悩んだ時期もあります。初めて世界代表になったのは26歳、初めてオリンピック代表になったのは29歳でした。体力的にも精神的にも苦しい毎日でしたが、これまでの鍛錬で培った「なにくそ根性」で乗り越えることができました。オリンピックでは目標としていた結果には届きませんでしたが、そこへ至るまで積み重ねてきた努力や経験は、私にとって金メダルにも匹敵する価値のある財産だと感じています。
30歳で現役を引退した後は、三井住友海上女子柔道部で12年間コーチを務め、その後、全日本柔道連盟シニアコーチとして8年間指導に携わりました。その中で、コーチングスキルだけでなく、選手一人ひとりと向き合うためのコミュニケーションの大切さも学ぶことができました。
現在はご縁をいただき、4月より台湾ナショナルチームのコーチを務めています。台湾語や中国語にはまだ苦労していますが、その分、毎日が新しい発見と学びの連続です。このような素晴らしい環境で指導できることに感謝しながら、選手たちとともに私自身も成長し続けていきたいと思っています。
最後になりますが、柔道を通じて学んだのは、勝負の厳しさだけではありません。努力を積み重ねることの大切さ、自分自身が成長していく喜び、そして国内外で多くの仲間と出会えたことは、私にとってかけがえのない財産です。また、礼を重んじ、相手を敬い思いやる心も柔道が教えてくれました。
そして何より、私に柔道を教え、生涯の礎を築いてくれた亡き父には、心から感謝しています。
これからも柔道で学んだことを人生に生かし、新たな挑戦を続けていきたいと思います。
- 台湾のTポーズ集合写真
- 東京遠征での指導の様子
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