2009年アジア柔道選手権大会結果総評・写真追加(09.5.29)

2009年アジア柔道選手権大会(チャイニーズタイペイ)

2009年5月23日(土)~24日(日)にチャイニーズタイペイ・台北で行なわれたアジア選手権大会の結果は下記のとおり。
日本選手団は25日に帰国予定。

男子 女子
団長 吉村 和郎(全日本柔道連盟)
男子監督 持田 達人(警視庁) 女子監督 酒井 英幸(自衛隊体育学校)
男子コーチ 賀持 道明(日本中央競馬会) 女子コーチ 薪谷 翠(ミキハウス)
ドクター 紙谷 武(東京厚生年金病院)
階級 選手 結果 階級 選手 結果
無差別 立山 広喜(日本中央競馬会) 2位 無差別 立山 真衣(フォーリーフ・ジャパン) 3位
100kg超級 鈴木 桂治(国士舘大学) 2位 78kg超級 3位
100kg級 猪又 秀和(セコム上信越) 5位 78kg級 池田 ひとみ(自衛隊体育学校) 3位
90kg級 西山 将士(新日本製鐵) 優勝 70kg級 上野 巴恵(三井住友海上火災保険) 優勝
81kg級 高松 正裕(桐蔭学園高校) 2位 63kg級 谷本 育実(コマツ) 1回戦敗退
73kg級 齋藤 涼(天理大学4年) 1回戦敗退 57kg級 徳久 瞳(三井住友海上火災保険) 2位
66kg級 江種 辰明(警視庁) 優勝 52kg級 垣田 恵利(武庫川女子大学4年) 3位
60kg級 秋元 希星 ((学)了徳寺学園職員) 1回戦敗退 48kg級 伊部 尚子(筑波大学4年) 2位

報告 (広報委員 渡邉 昌史)

2009年アジア柔道選手権大会が5月23・24日に台湾台北市・台北アリーナで開催され、男女各7階級及び無差別が行われた。
日本勢の優勝は男子66㎏級の江種辰明、同90kg級の西山将士、そして女子70kg級の上野巴恵の3名であった。
国別のメダル獲得数では日本男子は金2、銀3の計5個であり、金4個と過半数を制した韓国が合計でも6個と日本を上回った。
日本女子は金1、銀2、銅4の計7個であり、金メダル数では中国が3、韓国の2と、そして日本1と続いた。

asia001 asia002

会場となった台北アリーナ 大会は両日ともに午後7時過ぎまで続いた

asia003 asia004

「アジア柔道選手権大会」は漢語でこのように表される 会場内アリーナは東京体育館と同規模

戦評

【男子】
決勝までコマを進めたのは、66㎏級の江種辰明、81kg級の高松正裕、100kg超級の鈴木桂治であった。
66㎏級の江種辰明は初戦から安定した試合運びで勝ち上がり、4回戦こそGSまでもつれ込んだものの、5試合中4試合で一本勝ちと危なげなく優勝した。
81kg級の高松正裕は決勝でキム・ジェ・ブン(韓国)に対し、組み手争いを有利に進めようとしたものの、十分に組めず、逆に小外掛などで「有効」2つを奪われ銀メダル。
90㎏級の西山将士の決勝はGSに持ち込まれたが互いにポイントがなく、手数がわずかに上回った西山に旗判定は揃い、金メダル。
100kg超級の鈴木桂治は決勝戦、キム・ソー・ワン(韓国)に対し大外刈「有効」で有利に試合を進め、さらに場外際で放った鈴木の両襟を持っての右内股にキムの体は大きく宙に浮き、内股が決まったかと思われた。だが、キムの体は回転することがなかった。キムは左足が着地した瞬間に鈴木に体をあずけると、鈴木の身体は逆回転して背中から畳に落ちた。
ビデオ確認となり、キムが内股返で一本勝ちとなった。鈴木は準決勝で相手の体を捨てながらの脇固で釣手の左肘を痛めており、その影響が出たか。
無差別に出場した立山広喜は決勝で払巻込「有効」を先取しながらも、逃げる相手に決め手を欠き、払腰「技あり」の逆転負けで銀メダル。
60㎏級の秋元希星、73kg級の齋藤涼はいずれも1回戦敗退。敗者復活戦にもまわれなかった。

asia004
男子66kg級表彰式。台湾先住民族アミ族の伝統衣装の女性が華を添えた
asia066 asia081

優勝した江種辰明選手 優勝した西山将士選手

【女子】
決勝へ進出したのは、48kg級の伊部尚子、57kg級の徳久瞳、70kg級の上野巴恵であった。
48kg級の伊部尚子の決勝の相手はチャン(韓国)。1分59秒、チャンの組み際の膝つき背負投に伊部はたまらず回転し「一本」。銀メダルにとどまった。
57kg級の徳久瞳の決勝はリン(北朝鮮)。徳久は内股を返されで「有効」を許すも、直後に大内刈「有効」で追いつく。4分過ぎ、徳久が大内刈に入ったところをリンが返して「一本」。徳久、攻めるもリンの“後の先”で銀メダルに。
70㎏級の上野巴恵は決勝でヤオ(中国)を46秒、内股で一蹴。鮮やかな技で日本勢最初の金メダル。
3位決定戦にまわったのは52kg級の垣田恵利、78kg級の池田ひとみ、そして78㎏超級と無差別に出場した立山真衣であった。
52kg級の垣田恵利はジョウ(北朝鮮)に対し1分44秒、大内刈「一本」。うっぷんを晴らすかのように、刈り倒し銅メダル。
78kg級の池田ひとみはカカロバ(キルギス)を合技で下し、3位入賞。
立山真衣は78㎏級、無差別ともに3位決定戦はシケロバ(ウズベキスタン)との同じ顔合わせ。初日の78㎏級では大内刈「一本」、2日目の無差別でも内股返と支釣込足の「技あり」2つでいずれも銅メダルを確保した。
63kg級の谷本育実は1回戦敗退で、敗者復活戦にも進めなかった。

asia070
優勝した 上野巴恵選手

総評

アジアで金メダル3個の現実
男女各7階級及び無差別で金メダル3個。これは世界選手権、ましてやオリンピックの成績ではない。アジア選手権での成績である。金メダルの数では男子は韓国、女子は中国が日本を上回っている。
北京オリンピックで世界の頂点を目指す日本の地位は「アジア」で大きく揺らいだ。
男子では7個のメダルを獲得したモンゴルなど、各国・地域の格闘技や選手の特性、身体能力を活かした戦い方が印象に残った。IJFランキングシステムの導入や各国における選手生活への便宜(兵役猶予)などの影響はあろうが、海外選手の気迫が日本勢を上回っていた。
女子では中国など、国内2番手以降の選手が確実に上位入賞を果たしていた。また、表彰台で号泣した選手もあり、勝つことへのひたむきさ、「アジアチャンピオン」への貪欲なまでの姿勢が垣間見られた。
対する日本勢の勝負に対する押し並べての淡泊さは、「未だ木鶏たり得ず」(双葉山)のような謙虚さとは相いれない、冷めた印象を禁じ得なかった。

アジアで開催される大会の意味
オリンピック、世界選手権もそうであるが、アジアで開催される国際大会は日本勢にとって大きな使命がある。しっかりと組んで正しい技「一本」で勝つこと。それは、とりもなおさず正しい柔道の手本を見せることである。
今大会の観客は多数とは言えない。だが、これから柔道を身につけて行く世代の子どもたちからの熱い視線が注がれていた。
筆者は、かつて台湾のある地方のごく一般的な小学校内の道場を訪問したことがある。そこでは、嘉納師範の姿と並び、世界で主流になりつつある変則変形的な柔道・技が目指す柔道として掲示されていた。このことは2つのことを教える。一つは、やはり志向するのは日本傳講道館柔道であること。だが、一方ではそれが必ずしも正しく理解されていないということである。
確かに、地道な教育普及とも重要であるが、本大会のような場で示す「正しい柔道」こそが、海外における異文化理解としての柔道の理解にとって何よりも効果的であるのは言うまでもないだろう。

男子

順位 60kg級 66kg級 73kg級 81kg級 90kg級 100kg級 100kg超級 無差別
1位 ボルドバーター 江種辰明 バン・ギーマン キム・ジェ・ブン 西山将士 ラコフ キム・ソー・ワン キム・ソー・ワン
モンゴル 日本 韓国 韓国 日本 カザフスタン 韓国 韓国
2位 キム・ヨン・ジン アン・ジョ・ハン ヤダフ 高松正裕 チョリエフ ファン・ヒー・テ 鈴木桂治 立山広喜
北朝鮮 韓国 インド 日本 ウズベキスタン 韓国 日本 日本
3位 ソビロフ ミヤラグチャー ニャム ムミノフ ボラット テムーレン リュスクル トゥレンディバエフ
ウズベキスタン モンゴル モンゴル ウズベキスタン カザフスタン モンゴル カザフスタン ウズベキスタン
チョル・グウァン・ヘオ クバカエフ キム・チョル・ス グウォ・レイ ヘ・ヤンツ シャオ ラジャビ ガンクヤグ
韓国 キルギスタン 北朝鮮 中国 中国 中国 イラン モンゴル
5位 マジラシ イロム ヌルムハメドフ ダシュダバ ウォン・ユン・ウー 猪又秀和 リン・ユ・ヘン シンケイエフ
サウジアラビア インド トルクメニスタン モンゴル 韓国 日本 台湾 カザフスタン
ダルウィッチ パク・チョル・ミン ハン・チュン・タ カイナザロフ チャ・ハンダー クマー ムンカバーター アロタイビ
シリア 北朝鮮 台湾 キルギスタン イラン インド モンゴル クェート

無差別 立山 広喜(日本中央競馬会) 2位

2回戦 準決勝戦 決勝戦
相手名 シンケイエフ ガンクヤグ キム・ソー・ワン
国 名 カザフスタン モンゴル 韓国
内 容
決り技 指導3 内股 技有(払腰)

100kg超級 鈴木 桂治(国士舘大学) 2位

1回戦 2回戦 準決勝戦 決勝戦
相手名 タングリエフ カン ムンカバーター キム・ソー・ワン
国 名 ウズベキスタン パキスタン モンゴル 韓国
内 容
決り技 横四方固 内股 反則勝 内股透

100kg級 猪又 秀和(セコム上信越) 5位

1回戦 2回戦 準決勝戦 3位決定戦
相手名 チャン・ロン・ペン プラトフ ラコフ テムーレン
国 名 マカオ ウズベキスタン カザフスタン モンゴル
内 容
決り技 払腰 払腰 GS有効(掬投) 掬投

90kg級 西山 将士(新日本製鐵) 優勝

1回戦 2回戦 準決勝戦 決勝戦
相手名 アリアルサレー チャン・チェアン ウォン・ユン・ウー チョリエフ
国 名 シリア 台湾 韓国 ウズベキスタン
内 容
決り技 横四方固 払腰 指導2 GS判定(3-0)

81kg級 高松 正裕(桐蔭学園高等学校) 2位

2回戦 3回戦 準決勝戦 決勝戦
相手名 カサチェフ ダシュダバ グウォ・レイ キム・ジェ・ブン
国 名 カザフスタン モンゴル 中国 韓国
内 容
決り技 横四方固 有効(背負投) 一本背負投 有効(小外掛)

73kg級 齋藤 涼(天理大学4年) 1回戦敗退

1回戦
相手名 ジュラコビル
国 名 ウズベキスタン
内 容
決り技 隅返

66kg級 江種 辰明(警視庁) 優勝

2回戦 3回戦 4回戦 準決勝戦 決勝戦
相手名 ソンボーン ザカリア ム・リトゥビリジェ ミヤラグチャー アン・ジョ・ハン
国 名 タイ イラン 中国 モンゴル 韓国
内 容
決り技 朽木倒 袖釣込腰 GS判定(3-0) 合技 浮落

60kg級 秋元 希星(学校法人了徳寺学園職員) 1回戦敗退

1回戦
相手名 チョル・ワン・へ
国 名 韓国
内 容
決り技 袖釣込腰

女子

順位 48kg級 52kg級 57kg級 63kg級 70kg級 78kg級 78kg超級 無差別
1位 チャン リン リン 上野巴恵 ジョン イサノバ
韓国 中国 北朝鮮 中国 日本 韓国 カザフスタン 中国
2位 伊部尚子 ブンドマー 徳久瞳 ワン ヤオ ドゥルマ キム
日本 モンゴル 日本 北朝鮮 中国 モンゴル 中国 韓国
3位 ウランセトセ 垣田恵利 バッツグス ムンクザヤ ルクハンデグ ヒョン キム ドゥルマ
モンゴル 日本 モンゴル モンゴル モンゴル 北朝鮮 韓国 モンゴル
モオ ミンガゾバ ヌン アルディコバ ワン 池田ひとみ 立山真衣 立山真衣
中国 カザフスタン 中国 カザフスタン 韓国 日本 日本 日本
5位 デビィ バーディグロバ リエン カン ウルダバセワ サフゴロドンニャヤ ハン ハン
インド ウズベキスタン 台湾 韓国 カザフスタン カザフスタン 台湾 台湾
ヒイトバ ソーダム イサコバ ビデル チョンタム シャルマ ソゴオ ワイ
キルギス インド キルギス イラン インド インド モンゴル ベトナム

無差別 立山 真衣(フォーリーフ・ジャパン) 3位

2回戦 敗復最終戦 3位決定戦
相手名 ワイ シケロバ
国 名 中国 ベトナム ウズベキスタン
内 容
決り技 裏投 不戦勝 合技

78kg超級 立山 真衣(フォーリーフ・ジャパン) 3位

2回戦 準決勝戦 3位決定戦
相手名 ハン シケロバ
国 名 台湾 中国 ウズベキスタン
内 容
決り技 払腰 合技 大内刈

78kg級 池田ひとみ(自衛隊体育学校) 3位

1回戦 2回戦 敗復最終戦 3位決定戦
相手名 ジャン シャルマ カカロバ
国 名 中国 韓国 インド キルギス
内 容
決り技 背負投 有効(袖釣込腰) 背負投 合技

70kg級 上野 巴恵(三井住友海上火災保険) 優勝

2回戦 準決勝戦 決勝戦
相手名 ウルダバセワ キム ヤオ
国 名 カザフスタン 北朝鮮 中国
内 容
決り技 払腰 技有(出足払) 内股

63kg級 谷本 育実(コマツ) 1回戦敗退

1回戦
相手名 カン
国 名 韓国
内 容
決り技 有効(内股)

57kg級 徳久 瞳(三井住友海上火災保険) 2位

1回戦 2回戦 準決勝戦 決勝戦
相手名 カハニ イサコバ リエン リン
国 名 イラン キルギス 台湾 北朝鮮
内 容
決り技 大内刈 大外刈 GS判定 大内返

52kg級 垣田 恵利(武庫川女子大学4年) 3位

2回戦 準決勝戦 3位決定戦
相手名 ミンガゾバ ジョウ
国 名 カザフスタン 中国 北朝鮮
内 容
決り技 一本背負投 背負投 大内刈

48kg級 伊部 尚子(筑波大学4年) 2位

1回戦 2回戦 準決勝戦 決勝戦
相手名 パク シエ モオ チャン
国 名 北朝鮮 台湾 中国 韓国
内 容
決り技 GS技有(大内刈) 有効(大内刈) 袈裟固 背負投