られたという報告があります。女子陸上選手の50%以上に貧血が見られるという報告もあります。運動による貧血の原因は以下のようなものがあります・鉄需要増多に伴う相対的不足・発汗による鉄排泄量増多・機械的衝撃による赤血球の破壊(溶血)・筋肉損傷による鉄喪失(ミオグロビン尿)・筋肉の肥大による鉄需要(ミオグロビン)の増大・女性における月経血や不正子宮出血等による鉄の喪失・高強度または長時間の運動により肝臓からのヘプシジン分泌増加による鉄吸収の減少・組織損傷による炎症の継続によるヘプシジン分泌増加による鉄吸収の減少鉄欠乏性貧血ヘモグロビン合成に必須の鉄が不足することに起因する貧血を鉄欠乏性貧血といいます。鉄欠乏性貧血の診断には、ヘモグロビン値だけでなく生体内の鉄動態の把握も重要となります。鉄欠乏状態が続くとまず貯蔵鉄(フェリチン)が減少し、次いで血清鉄、最後にヘモグロビンが減少し、貧血となります。貧血に至る前の潜在性鉄欠乏状態を経て、さらに鉄欠乏が進むと鉄欠乏性貧血の発症に至ります。そのため、鉄欠乏性貧血の評価としては、赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン量のほか、TIBC (総鉄結合能:血液中のトランスフいますが、日本人の20-29歳の鉄摂取量は男性7・2㎎女性6・5㎎と食事では不十分とされています(鉄剤の適正使用による貧血治療指診:日本鉄バイオサイエンス学会)。食品に含まれる鉄分には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、魚や肉に含まれる鉄分がヘム鉄(吸収率10-30%)、その他の野菜や穀類等に含まれる鉄分が、非ヘム鉄(吸収率1-8%)で、ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて吸収が高くなります。吸収機構の違いで吸収率が変わります。ヘム鉄は、たんぱく質と結合した状態で吸収されます。一方、非ヘム鉄では2価の鉄イオンのままのため、食品に存在するタンニンや食物繊維、シュウ酸、フィチン酸などにより吸収阻害を受けます。さらに、非ヘム鉄の吸収は、通常存在する安定した3価の鉄イオンでなく、還元して2価の鉄イオンにならないと吸収されないため、ビタミンCなどの還元性のある栄養素の摂取も必要となりますが、ヘム鉄はその必要がありません。鉄不足を効果的に予防するためには、吸収性の高いヘム鉄が豊富な食品を含むバランスのよい食事を摂る必要があります。ただし、食事などで改善されないような貧血は、病気などによる2次性貧血のこともあるので、定期的に検査を受ける必要があります。鉄吸収を促進するもの・肉、魚のヘム鉄・ビタミンC・アミノ酸(クエン酸、フマル酸、コハ貧血の中ではもっとも多く、ヘモグロビンの材料である鉄が不足することによって起こります。消化管出血のほか、女性では月経や不正性器出血が原因となります。運動によって起こる貧血は鉄欠乏性の貧血です。2)その他の栄養欠乏胃の切除後、萎縮性胃炎などに伴うビタミン欠乏、アルコール多飲、栄養不良に伴う葉酸欠乏などで起こります。3)慢性の病気慢性炎症性疾患、慢性腎臓病、関節リウマチ、悪性腫瘍(がん)などが原因となり、すべての貧血の3分の1程度を占めます。炎症性サイトカイン(IL-6)によるヘプシジンの合成増加が関係します。4)血液の病気白血病などの血液のがんなどでも貧血が起こります。5)その他男性ホルモンの減少、潜在的な炎症などによるもので高齢者の貧血のうち2~3割程度がこの分類に入ります。運動選手の貧血スポーツ選手において貧血はよく見られます。そのほとんどは鉄欠乏性貧血であり、一部は溶血による貧血であるといわれていました。その機序は、繰り返しの運動で足の裏の血管内で赤血球が壊されるといわれ、「スポーツ貧血」といえば、物理的な溶血をさすといわれていました。日本代表や国スポに出場する選手では男子5-10%、女子20-25%に貧血が見ェリンが鉄と結合できる総鉄量)、血清フェリチン量を指標とします。日本鉄バイオサイエンス学会は、鉄欠乏性貧血の診断基準として、ヘモグロビン12 g/dl未満、TIBC360 μg/dl以上、血清フェリチン値12 ng/mL未満を挙げています。貧血を予防するためには、普段から「鉄分」を摂取する1日あたり食事から摂取すべき鉄量は、機能鉄(ヘモグロビン)組織鉄血清鉄貯蔵鉄(フェリチン)正常鉄欠乏性貧血減少減少図334まいんど vol.4520-49歳で男性10㎎、女性15㎎とされて
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