従来の柔道のイメージを覆しながらも、園が大切にする“主体的な保育”と自然に重なっていました。園では「自分の身は自分で守る」力を大切にしています。転んだ時に頭を守る動きや、危険を避ける判断力などを、子どもたちは経験を通して身につけていきます。これは、まさに“生きる力”です。その力を、遊びのように、しかし確実に引き出してくれるのが、KJAの指導スタイルでした。形式にとらわれず、子どもの発達段階に合わせて柔軟に進められる稽古は、園の保育方針と深く響き合っていました。「これなら、うちの子たちにも届けられる」そう確信した園長は、迷わず導入を決めます。こうして小桜愛児園の柔道は、「教える」ためではなく「育てる」ための柔道として、静かに歩みを始めました。「人づくりは国づくり」長期育成指針の冒頭には「人づくりは国づくり」という言葉があります。KJA道場では、試合の勝敗だけにとらわれず、一人ひとりの成長に寄り添い、異なる歩幅の子どもたちが自分の道を自分のペースで進めるように支えています。ここで大切にしているのは、勝ちにこだわることだけでなく、自分らしく歩み続ける力です。その小さな歩みが積み重なれば、やがて社会を支える確かな力となります。今日もKJA道場では、小さな芽が力強く息吹いています挑戦心を刺激する工夫のひとつです。鈴木先生は「療育を学ぶ中で、高いところが好きな子どもがいることを知り、ボルダリングを導入しました」と話します。【調和】信じて待つ、育てる姿勢KJA道場の根底にあるのは「否定しない」関わり方です。子どもがやりたくない時は無理強いせず、「またやりたくなったらおいでね」と声をかけ、気持ちが芽生えるまでじっくり信じて待ちます。これは長期育成指針のステージ1(0~5歳:「楽しみ」や「喜び」を発見することが最も重視されるべきステージ)で重視される“心の根っこ”を育む姿勢です。また、指導者たちは子どもたちとのコミュニケーションを大切にしながらも、けじめを持つことを忘れません。「ふざけること」と「楽しむこと」の違いを丁寧に伝え、安全で集中できる場を守っています。こうして自由な表現と規律が調和した空間がつくられていました。【修身】日常──礼を伝える背中稽古が終わると、鈴木先生は誰よりも早く出口に立ち、子ども一人ひとりに目を合わせて「今日もがんばったね」と声をかけます。保護者には「ありがとうございます」と深々と頭を下げます。その所作は形式ではなく、相手を尊重し感謝を伝える心そのもの。子どもたちは、その背中から礼儀の意味を自然に学び取っているようでした。柔道を子どものそばに──小桜愛児園の出張授業神奈川県横浜市の認可保育園「小桜愛児園」では、月1回の正課活動としてKJA道場の出張授業を実施しています。この日は年中・年長あわせて47名が参加。安全を確保した即席の柔道スペースで、4クラスに分かれ30分ずつ、講師3名が丁寧に指導を行いました。導入の決め手となった言葉小桜愛児園が柔道を導入したきっかけは、KJAの先生の「畳がなくても、柔道衣を着なくても、ガツガツやらなくてもいい」という一言でした。 ※長期育成指針のステージに関しては、こ ち ら を ご 覧ください。小桜愛児園でのKJA道場の出張授業の様子
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