栄養&コンディショニング編みなさん、はじめまして。4月より、全日本柔道連盟の強化スタッフとして、強化選手の栄養管理のお手伝いをさせていただくことになりました栄養士の坂下美裕と申します。今回より、この『柔道ゼミナール』でも、栄養や体調管理についてみなさまにお伝えしていくことになりました。みなさまにとって少しでも有益な情報をお届けできるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。Ⅰ度Ⅱ度Ⅲ度重症度Ⅳ度低⾼ 水分補給について熱中症対策としての水分補給水だけでなく電解質も学柔道部員の調査では、水分補給をしていても1時間あたり平均1・0L、海外のアスリートでは、発汗量が3・0Lにおよぶというデータもあります。発汗によって脱水が体重の2%以上にな害が熱中症です。消防庁の報告では、令和6年5月から9月の全国における熱中症による救急搬送人員の累計は9万7578人であり、調査開始より最も多い人数となったそうです。熱中症では最悪の場合、命にかかわりますので、熱中症対策としても水分補給はとても重要な対策のひとつです。【図①】発汗量は運動強度や気象条件、環境、個人差がありますが、運動中は1時間当たり約0・5~2・0Lが失われます。夏場の大ると、運動能力や競技パフォーマンスへの影響が大きくなります。ヒトは体重の約60%が水分(体液)です。体内にはたくさんの水分があるにもかかわらず、体重の1%を失うだけでノドの渇き、2%では不快感など脱水症状が現れます。それほど、生命活動において水分はとても大切であり、運動中に汗によって失われた水分は適切に補給する必要があります。汗によって失うものは水分だけではありません。汗の成分の99%以上は水ですが、電解質(ナトリウムなど)も含まれています。汗をなめるとしょっぱいですよね。汗の量が多くなると、汗の塩分濃度も上昇します。汗を多くかいた時に塩分を含んだ飲料が勧められるのはこのためです。この時に水だけを摂取すると、失った水分量は回復前に戻るため、ノドの渇きがおさまります。しかし、必要な塩分量は補給できていないので、体液のバランスが崩れて体内では脱水が続いたままとなります。競技パフォーマンスの維持や体調管理のうえでも水分だけではなく電解質(ナトリウムなど)も補給して、体液の量と濃度を一定に保つことが必要なのです。それではさっそく第1回「柔道ゼミナール・栄養&コンディショニング編」を始めていきたいと思います。今回のテーマは水分補給です。桜も散り、暖かく穏やかな季節ではありますが、本格的な暑さがくる前に水分補給についてお話させていただきます。「運動中に水を飲まない」というのは昔の話で、現在では、運動中だけでなく日常生活でもこまめな水分補給の重要性は広く知られてきています。気温が高い、体温が高い時には体温調節のため、汗をかきます。これは、皮膚の上で汗を蒸発させることで体の熱を奪い、体温の上昇を抑える働きがあるためです。湿度が高いと汗が蒸発しにくいなど、体の熱を放出するには、気温、湿度、風といった気象条件や環境も影響します。湿度が高い日はベタベタして暑く感じますよね。汗が蒸発せず、体にまとわりついているせいでもあります。この体温調節機能がうまく働かなくなって過剰に体温が上昇することで発症する障臨床症状からの分類熱中症診療ガイドライン2024熱中症の症状と分類 参考:日本救急医学会症状めまい・失神⽴ちくらみ・⽣あくび筋⾁痛・筋⾁の硬直頭痛・気分の不快吐き気・嘔吐倦怠感・虚脱感体がぐったりする、⼒が⼊らない意識障害・痙攣⼿⾜の運動障害呼びかけや刺激への反応がおかしいガクガクと引きつけがある真直ぐに⾛れない・歩けない肝・腎臓機能障害深部体温が40℃以上意識レベルが低い状態治療応急処置と⾒守り冷所での安静⽔分・Naの補給熱痙攣熱失神医療機関へ体温管理、安静⽔分・Naの補給(点滴)熱疲労⼊院加療体温管理体外・体内冷却⾎管内冷却熱射病集中治療早急に体温管理体外・体内冷却⾎管内冷却図①図①36栄養士/健康運動実践指導者/全日本柔道連盟強化委員会科学研究部員/日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ) /2025年度より柔道強化選手への栄養サポートを行う坂下美裕PROFILEさかした みゆまいんど vol.44
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