自然気胸自然気胸になりやすいのは、10代後半から30代の、やせ型で胸の薄い男性です。自然気胸の発生原因は、外傷の有無に関係なく肺の中の肺嚢腫(ブラ、ブレブ)が破裂することによって、臓側胸膜が破れます。急な呼吸困難や背部の痛みがある場合には自然気胸を疑う必要があります。外傷性気胸肋骨骨折などの外傷により壁側胸膜が損傷され、外部と胸郭がつながってしまう(開放性気胸)。治療は、基本的には保存治療が行われますが、肺から胸腔内に漏れ出ている空気の量によっては、積極的な治療対象になります。特に、ショック状態を呈する緊張性気胸や両側の肺が著しく損傷を受けている場合には、早期の空気を胸腔内から外部へと排泄する(胸腔ドレナージ)といった治療介入が必要です。心臓しんとうスポーツ中に、健康な子どもや若い人の胸部に比較的弱い衝撃が加わることにより致死的不整脈である心室細動や心停止が起こることがあり、突然死の原因になることがあります。このことを心臓しんとうといれているかどうかはわかりません。痛みがある部位で判断したり、超音波検査などで段差などを確認します。胸郭の下方には腹直筋や内腹斜筋が付着しているので筋・腱付着部の損傷の場合があります。圧痛や体動時の痛みは1~2週程度で緩和されてきますが、4週程度痛みが残ったり損傷部位の肥厚・突出が残ることがあります。気胸気胸とは、胸腔内に空気が漏れ出てしまうことにより、正常な肺が圧迫されてしまった状態のことです。気胸の原因は、臓側胸膜と呼ばれる部分が損傷を受け、肺の中の空気が胸腔内に漏れ出ることです。呼吸をする時に重要な役割を担う肺は、胸腔と呼ばれる空間に納まっています。胸腔内の空間は胸膜で裏打ちされており、肺の表面は臓側胸膜と呼ばれる膜で覆われています。胸腔内と肺の中に存在する空気は、臓側胸膜によって空間的に隔てられており、通常は肺の中の空気が胸腔内に入ることはありません。気胸は、発症様式や原因によって、自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸、緊張性気胸などがあります。緊張性気胸は、その漏れてしまった空気がさらに胸腔内にたまってしまい、心臓や大静脈も圧迫してしまっている状態のことをいいます。緊張性気胸では胸部の圧力が上昇することにより、全身から心臓へ戻る血液量が少なくなってしまいます。この状態が進行すると、血圧低下やショックなどを引き起こします。命に関わる可能性もあるため、発症した場合には、入院して空気を胸腔内から外部へと排泄する(胸腔ドレナージ)が必要になりますい、発症すぐに迅速な対処が命を救うカギになります。比較的弱い衝撃とは、胸骨や肋骨が折れるとか、心臓の筋肉が損傷するような強い衝撃ではありません。子どもが投げた野球のボールが当たる程度の衝撃で起こります。心臓しんとうは衝撃の力によって心臓が停止するのではなく、心臓の動きの中で、あるタイミングで衝撃が加わった時に、致死的不整脈が発生することが原因と考えられています。心臓の真上あたりが危険な部位です。心臓しんとうの多くは18歳以下に起こっています。子どもは胸郭が軟らかく、衝撃が心臓に伝わりやすいからです。野球やソフトボールなどでボールが当たった際や、直接の打撃や日常の遊びのなかでも起こり得ます。柔道でも心臓しんとうの可能性がある例が報告されています。発症してしまったら、迅速なAEDの使用が最も効果的と考えられています。柔道では、急な意識消失が起こるのは頭部外傷や絞めにより落ちた時など心臓の問題以外でもあり得ますが、子どもが急に倒れた時などには、心臓しんとうの可能性も念頭に入れ、一刻も早くBLS(一次救命処置)を開始することが必要です。特に大事なのは、救急隊が到着する前に心室細動に対して除細動(AEDの使用)を実施することです。救える命を救うため、指導者はもちろん、子どもたち自身や関係者もBLSを実施できるよう定期的に訓練を受けるべきです。また、AED(自動体外式除細動器)を大会が行われる場所や日常使用する施設などに常備し、場所の把握をしておきましょう。れていなくても肋間筋損傷もあり得ます。フレイルチェスト(動揺胸郭)フレイルチェストは、上下連続した肋骨骨折や肋軟骨・胸骨の骨折を指し、胸部外傷によって複数の肋骨が連続して骨折し、胸壁の一部が不安定になる状態です。通常、胸郭は呼吸に合わせて一体となって動きますが、フレイルチェストでは、自発呼吸では吸気時に支持性を失った部分が陥凹し、呼気時に突出するという奇異呼吸を呈します。胸壁の損傷だけでなく肺挫傷をともなうことが多く、肋骨骨折にともなう疼痛は、自発呼吸や咳嗽を抑制し、低換気から無気肺をきたしやすくなります。フレイルチェストの治療は、十分な鎮痛と急性呼吸不全に準じた治療(人工呼吸器の装着など)をおこないます。肋骨骨折の偏位が著しい時等では外固定術(肋骨固定術)を併用することもあります。肋軟骨損傷肋軟骨は、胸骨と肋骨の結合部分にある軟骨です。肋骨は左右12本ずつありますが、いちばん上の第1肋骨から第7肋骨は肋軟骨と胸骨とがつながっていて、第8肋骨から第10肋骨はすぐ上の肋軟骨と肋骨がつながっています。第11・12肋軟骨は浮いていて、その先で連結をしていません。肋軟骨はX線検査では写らないので、折図3 奇異呼吸図5 外傷性気胸 図4 ブラまたはブレブの破裂による自然気胸35 まいんど vol.44
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