まいんど vol.36 全日本柔道連盟
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▲日本選手団。後列左は入賞した選手たち(左から高橋、吉良、水掫)◀水掫選手の試合視覚障がい・ろう者柔道振興部会第1回アジア太平洋デフ柔道選手権大会報告 デフリンピックは4年に一度、聴覚障がいなど耳の不自由な人(ろう者)を対象とした世界最高峰の競技大会です。2025年に東京開催が決定しており、柔道競技もその対象となっています。耳の不自由な人を対象とした柔道(デフ柔道)においては世界選手権などの国際大会が開かれ、その規模は年々拡大しています。 このたび第1回アジア太平洋デフ柔道選手権大会が、3月5日(日)、6日(月)の日程でキルギスタン・ビシュケクにて開催されました。選手団は3月1日夜に羽田空港集合、イスタンブール経由で3月3日早朝キルギスタンの首都ビシュケクに到着、トランジットを含め実に30時間の長旅でした。3月4日、5日に調整練習、抽選、計量を経て大会へ臨みました。日本選手団並びに結果は以下のとおりです。■日本選手団監 督 瀬川 洋(広島国際大学)コーチ 竹澤稔裕(順天堂大学)トレーナー 麓康二郎(南千住あんず接骨院)手話通訳 村山春佳(全日本ろう者連盟)、サイカル氏(地元通訳)60㎏級 吉良暁生(千葉県立八千代特別支援学校)90㎏級 高橋朋希(群馬県田島道場)100㎏級 水掫瑞希(東海大仰星高校2年)【試合結果】■60㎏級:吉良暁生 2位 吉良選手は初戦(準決勝)のイラン選手に「指導2」を奪われる苦しい展開となりましたが、残り30秒、起死回生の大外刈で「技あり」を奪い勝利。試合前に竹澤コーチと入念に確認していた技が見事に決まっての勝利でした。しかし、決勝戦は開始8秒の背負投で一本負け。相手の引手側へ動きながら組みにいく初歩的なミスを犯してしまい、残念な結果となりました。■90㎏級:高橋朋希 3位 高橋選手は5人のリーグ戦となり、初戦のカザフスタン選手には背負投で一本勝ちしたものの、2試合目の韓国選手、3試合目のイラン選手に「指導3」の反則負け。最終戦のモンゴル選手に一本勝ちして3位を確保しましたが、実力的に十分金メダルを獲れただけに残念な結果となりました。国際大会の経験不足もあり反則狙いの相手に対する対応ができていなかったこと、体重調整などコンディショニングの改善が今後は望まれます。■100㎏級:水掫端紀 2位 水掫選手は4人のリーグ戦となり、キルギスタン選手に内股、韓国選手に払腰で一本勝ちしましたが、ウズベキスタン選手の変形の組手に対応できず隅返で一本負けし2位という結果になりました。この階級にしては体重が軽く、今後は総合的な体力向上と、日本代表であるというメンタルの強化が必要と思われます。相手を投げ切る技を持っており、高校2年生ということからも今後に期待の持てる選手です。 今回は男子3階級に派遣し、銀2、銅1という結果となりました。今回初めて国際大会に出場した選手もおり、よい経験となったと思います。指導陣も今回初めてデフ柔道国際大会に帯同し、コーチボックスからのジェスチャーなど、普段帯同する試合とは異なった工夫をする必要があり、これもよい経験となりました。 我々の目標はあくまで2025年デフリンピック東京大会の金メダルです。これからも選手と指導陣が一体となって課題を克服し、最大の目標に向けて精進してまいります。今回の大会出場に際しご尽力いただいた関係者のみなさまに感謝申し上げ、大会報告とさせていただきます。彼らの活動を広く知ってもらうことがデフ柔道の発展につながりますので、今後ともご指導ご協力をお願い申し上げます。(広島国際大学 瀬川洋)知的障がい者柔道振興部会ダウン症を持つ子の柔道体験会実施 知的障がい者柔道振興部会では、普及・振興活動の一環として、各地の知的に障がいがある方々のサークル等に働きかけ、柔道の楽しさを広く紹介する活動を行っています。 今回は、神奈川県平塚市のダウン症を持つ子と親の会「ポコポコの会」のみなさんに、柔道の紹介と体験会を実施しました。 当日は30名を超える方々の参加がありました。柔道の紹介では、知的障がい者柔道には安全に競技や練習を楽しむためのルールがあることを説明しました。また講師の指導経験や知的障がい者柔道経験者の保護者の体験から、子どもが柔道を始めたことで変化があったこと、具体的には練習過程において、身体的・精神的な成長に効果が認められることなどを和気あいあいの雰囲気のなかでお話しました。体験会では、さまざまな遊びを取り入れたウォームアップの後、姿勢良く組み合って動き、相手の動きに自分の動きを合わせることで、相手の攻撃を防御する練習。さらに一歩進んで相手の動きの先を読んで相手のバランスを崩し、技をかける練習。また自分が倒れた、投げられた場合の受身練習などを楽しく体験してもらいました。 参加した保護者からは、「体験前に抱いていた、柔道は危険というイメージに変化があった」「今回の体験により、柔道は障がいの有無にかかわらず、誰もが親しめる42まいんど vol.36

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