まいんど vol.36 全日本柔道連盟
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 欧州の各道場に訪問すると、年齢や帯の色ごとに練習時間が決まっていることが多い。次から次へと子どもたちが入れ替わり、練習終わりの礼の頃には、次のクラスの子どもたちが道場の外で待っているという塩梅だ。もちろん指導する先生もそれぞれのクラスで変わっていくのだが、各練習時間は長くても1時間といったところだろうか。海外での練習量のスタンダードは、いったいどれぐらいなのだろうか。各国の道場の協力のもと12歳以下を対象としたクラスの練習量を調査してみた。 1週間の練習頻度を見てみると、最も多いのが日本で2.65回、次いでイギリスの2.52回だ。意外にも練習回数が少ないのが、オランダ1.44回、フランス1.47回だ(図1)。 次に1週間の練習時間を比較してみた(図2)。練習時間においても日本1.97時間(約2時間)、イギリス1.72時間(約1時間45分)が長い傾向にあり、カナダ1.15時間(約1時間10分)、フランス1.26時間(約1時間15分)と短い傾向が見られた。 各国の練習頻度と練習時間をかけると、1週間の練習量を比較することができる(表1)。すると、日本の1週間の練習量は5.22時間(約5時間13分)で最も多く、フランスが1.85時間(約1時間50分)で最も短いことがわかった。 1週間のスポーツ活動の時間が長くなるほどケガの発生率は高くなり(Rose et al, 2018)、また、1週間の練習時間が年齢×1時間より長くなるとケガの発生率が高くなると報告されている(Jayanthi et.al., 2015)。日本はケガの発生率が高く、欧州ではケガがほとんどない、と述べられることがあるが、根本的に柔道に携わる時間が圧倒的に異なることがこの調査からもわかる。 これまでのように報告されたケガの件数のみを比較すると、「日本の柔道は危険だ」という誤認識が生まれやすいが、単純に練習に携わる時間の違いが数値に現れているとも言える。単位時間あたりのケガの平均発生数などの比較も必要かもしれない。さらに練習の内容や質も調査できると、根本的なケガの原因がわかるのではないだろうか。教育普及・MIND委員会 教育普及部会 文/曽我部晋哉(甲南大学 教授)海外では、1週間にどれぐらい練習するの!?25回目 教育普及・MIND委員会では、日本の柔道教育普及活動をより充実させるために、各国連盟の協力のもと、世界の柔道最新事情や取り組みについての調査・報告をしております。さて、今や柔道は世界的なスポーツとして様々な国で行われています。日本では当たり前でも、諸外国では一般的ではないことも沢山あります。中でも、子どもに対する練習量の多さは、結構驚かれることが多いようです。そこで、各国の柔道クラブの練習時間を比較して、第24回の本記事で取り上げたケガの報告数との関係について検討してみました。▲図1.1週間の練習頻度1.971.151.261.421.721.271.382.652.171.471.442.521.872.26▲図2.1回の稽古の練習時間▲表1.各国の練習量練習頻度×練習時間練習量日本2.65×1.975.22カナダ2.171.152.50フランス1.471.261.85オランダ1.441.422.04イギリス2.521.724.33オーストラリア1.871.272.37アメリカ2.261.383.12

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