まいんど vol.34 全日本柔道連盟
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▲現在は、夫と農業法人経営に取り組む(右から2人目が齋藤さん)北海道大学時代は3年連続で全日本学生体重別選手権に出場――柔道を始めたきっかけは?「もともと小学校中学校とスケートや水泳、バレーボールなどをやっていて運動好きでした。高校では何か武道系のスポーツをやってみたくて友だちに誘われたのをきっかけに入部しました。当時、アニメで「YAWARA!」ブームだったのでその影響もあったかもしれません。同期は女子だけで5~6人。男子も同じくらいいました。指導者はいたのですが、どちらかというと友だち同士で教え合うような部活でした。初めてやる競技だったので、とにかく技を覚えるのが楽しかった。高校3年のときに、全道大会で3位になりました。そんなに強くもなかったのですが、当時はまだ高校から始める人も多くて、組み合わせに恵まれると、そんなことも起こりました。いまは小学校から始める子がほとんどなので、高校から始めて入賞するのは難しいかもしれませんね」――大学は、北海道大学に進学しました。「高校時代あまりやっていなかった寝技中心の練習が逆に新鮮で、大学でも技を覚えていく過程は楽しかったです。1年の時に七大学戦を観戦して、『こんな世界があったのか』と震えるくらい感動しました。仲間の思いを背負って15人戦のあの場に立つ。自分には絶対無理だなと感じて、出場する選手たちのことはとにかく尊敬していました。自分自身は女子なので、もちろん出場はできないのですが、普段一緒に練習している仲間なんだ、なんとしても応援したいという気持ちを強く持っていました。体重別の個人戦という目標もありましたし、あまり悩んだり考えこんだりすることもなく、『強くなりたい』という一心で、それだけを考えていた4年間でしたね」――卒業後は、農業普及指導員を経て、農家に。「当時は就職氷河期で、公務員になろうと思っているなかで、農業普及指導員という職業を知りました。農家の方と一緒に現場で技術改良に取り組んだり、経営向上のための支援をしたりする仕事です。夫も同じ仕事をしていて共働きだったのですが、夫が実家を継ぐタイミングで退職し、農家として生計を立てていくことになりました。肉牛の繁殖とアスパラガスの栽培がメインです。6年前から法人化して、いまはネット販売や牛肉の加工なども担当しています。売り上げが数字に表れるのでやりがいがありますね。それとお客さんの反応があるのもうれしいです」――お仕事に柔道経験はどのように役立っていますか?「これは柔道が、というよりはどちらかというと体育会的な根性論だと思います。農業も体力的にしんどいときがあるんですが、『あの合宿よりはつらくないぞ』と思ったことが何度もあります。また、先輩から言われたことに対して絶対に『できません』と言わない、というのもありますね。多少やったことがないことでも、とにかくやってみる。それによって実績を重ねて、信頼を築いていく。それは社会に出てから役立ちました。いまも法人化して社長になった夫から、『ネット販売やるから担当して』『牛肉売るから肉を切って』とか結構な無茶ぶりもあるのですが、それも対応しています(笑)」――柔道指導にも携わっているそうですね。「大学を卒業してからは年に数回柔道衣を着るくらいで、結婚してからは10年くらい一切柔道はやっていませんでした。でも、子どもと一緒に柔道をするのが夢だったので、9年前、長女が小学校にあがるタイミングで、うまくだまして(笑)『地元のスポーツ少年団で一緒にやろう』と。そこで再開しました。今は週3回指導者として携わっています。自分の子ども、よそ様の子ども関係なく成長していく姿を肌で感じられるので、とても楽しいです」――齊藤さんが考える柔道の魅力は?「私の場合は、やっぱりできなかった技や動きができるようになること、だと思います。先日も娘が合宿で『こういうのを習ってきた』と言って、小内刈の体捌きをスポーツ少年団でみんなに教えてくれて、『なるほどなぁ』と思って。子どもたち相手にやってみたらおもしろいくらいにかかった(笑)。もちろん体力は年々落ちてくるんですけど、まだなんとかして強くなりたいという気持ちがありますね。柔道のいいところはどんな体型の子にもなんらかの向いた技があるし、立ち技寝技と戦い方も幅広い。だから飽きない。小さい子どもたちを見ていたら、熊の子みたいにじゃれあって転がって。あれって本能ですよね、きっと。それが根源的な魅力なんじゃないかと思います」とにかくやってみる!そして、実績を重ねて、信頼を築いていく齊藤今日子 さいとう・きょうこ(旧姓長屋)1975年生まれ。北海道十勝管内本別町出身。帯広柏葉高校で柔道を始める。高校3年時に道大会48㎏級3位。北海道大学農学部進学後は、北大柔道部で寝技を磨き、北海道学生体重別選手権48㎏級で3連覇。全日本学生体重別選手権出場。卒業後は農業普及指導員の国家資格を取得。13年間公務員として務めたのち、同じ仕事をしていた夫が実家の農家を継ぐタイミングで退職し本格的に農業に取り組む。6年前から法人化し、現在は『株式会社斉藤ファーム』で専務として、アスパラガス栽培・販売、牛肉の加工販売、ネットショップ運営など幅広く担当する。PROFILEやわらたちのセカンドキャリアやわらたちのセカンドキャリア〜私たちの選択〜〜私たちの選択〜高校から柔道を始め、北海道大学では全道学生体重別王者に。現在は、夫婦で農業法人を経営しながら、スポーツ少年団で指導者として柔道に携わる、齊藤今日子さんを紹介します。齊藤今日子さんが選んだ道農業法人経営FILE.1921まいんど vol.34

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