まいんど vol.32 全日本柔道連盟
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中里 昨年、東京オリンピックが開催されました。自国開催のオリンピックというのは非常に大きなイベントで我々が生きている間にはもうないと思うのですが、とりあえず無事に終了しました。そして、その後のことを全柔連ではいろいろと考えております。大きなところではブランディング戦略特別委員会を設置しました。その他でも例えば指導者養成委員会では資格制度を大きく変えようと動き出していますし、登録システムの刷新にも着手しています。教育普及・MIND委員会でも柔道教室の在り方を変えようとしたりしていますが、本日は大会事業委員会関係の見直しについて、お話をうかがいたいと思います。 具体的に言いますと、まず、全日本カデ体重別選手権大会(以下、全日本カデ)を廃止。全国小学生学年別大会(以下、小学生学年別)は、トーナメント制をやめ、中身を変えることにしました。そして、全日本シニア選手権大会(以下、全日本シニア)を創設。また、文武両道杯の開催を実現したいというところです。また、井上康生強化副委員長からは「寝技大会をやってほしい」という要望も受けています。これもいい提案だと思っています。全日本カデの廃止について まず、全日本カデの廃止についてですが、以前から疑問に思っていたのは、カデという区分が、日本の学制に合っていないという部分です。日本の学制は中学、高校、大学ですが、カデの区分は「高校3年の早生まれ~中学3年生の早生まれではない生徒」となっている。つまり合致していない訳です(※註=大会開催年の12月31日時点で15歳以上18歳未満)。これまでは高校選手権(通常3月20日前後)の2、3週間後に全日本カデ(通常4月の第2週)を開催するというスケジュールで、かなり無理がありました。このあたりに関して、西田委員長はどうお考えでしょうか?西田 そうですね、日程的に、インターハイの予選と被る地区もあったりして、出場の第1候補、あるいは第2候補に選んでいた選手が全日本カデに出場しないという状況もありました。そうなると全日本カデを行う意味があるのかということにもなります。それでしたら前年度のインターハイ、全国中学校大会(以下、全中)の成績を加味して世界カデ選手権大会(以下、世界カデ)の代表を選考したほうがいいのではないかと、そういう考えのなかで廃止に至ったというわけです。中里 強化委員会からは世界カデの参加は見送ってもいいのではないか、という意見もあるようですが、IJFから日本の参加を強く希望されているので、簡単に決められないという事情もあります。中村 実際、強化のジュニアコーチからは、全日本カデが高校の大会等と日程的に重なるために、大会への出場自体を見送る高校が多いという話は聞いています。そうなると出場選手に関しても補欠を3次、4次くらいまで決めておかないといけなくなったりします。世界カデに関しては、全日本カデがなくなったことで代表のセレクトの仕方が難しくなりますので、強化のほうでもそういう部分を整理しなければいけない状況になっています。西田 世界カデの通常のスケジュールはいつ頃でしたっけ?中村 8月です。西田 となると全中やインターハイと重なる訳ですね。中村 そうなんです。国内大会を重視する学校も多いので、現場のコーチからは、代表を選ぶのが大変な作業になっていると聞いています。それを考えると全階級に選手を送らなくてもいいのでは、とも考えられますが、ただそれも団体戦のことを考えると簡単ではありません。逆に団体戦を考えて代表選手を選ぶというのも、公平性という点で難しさもありますし。西田 ただ、この年代の選手は発展途上なので、オリンピックの代表選考のように完全な公平性を担保しなくても、各選手の伸びしろなどを考慮して、「育成」という観点で選考し派遣するという考え方があってもいいとは思います。中里 たしかに、世界カデに関しては、勝つことを目的としないで、「育成」と割り切るという考え方もあると思います。中村 そうですね。ただ、国際経験がなく外国人選手とも組んだことがない選手を急にセレクトして連れていくと、技や体力の違いなどに慣れていないため、その経験が外国人選手に対する苦手意識を植え付けてしまうこともあり得ると思います。ですので、育成を重視するとしても、世界カデの前には小さな国際大会を経験させるなど段階を踏まないと、選手自身にもよくないのではという心配もあります。ただ、一方で若い段階からの海外経験が活きるところもあります。実際に海外の選手と組み合わないと経験できないこともあるので、派遣された選手にとってはものすごい財産になると思います。大迫 私がジュニアヘッドコーチをしているときに世界カデが始まったんですが、その第1回のときに髙藤直寿を連れて行きました。そのときは出発前に、組み手などの外国人選手対策をかなり行いました。中村 髙藤選手が後にオリンピックチャンピオンになっていることを考えると、その経験が育成につながっているということはありますね。やはり、一番の課題は世界カデの時期ですね、8月というのは高校生や中学生の大会が多いですから。中里 高校年代では、インターハイはやはり重視されていますね。中村 インターハイの成績は進学にも影響があると思います。田中 全日本カデには中学生が出場することもあったのですが、選考対象となる全中から全日本カデまで間が約半年あるので、選手の身体が大きくなって階級が変わることもあり、その調整もなかなか大変でした。中村 出場するために過度な減量をしなくてはならないとなると、成長段階でもあるので問題ありますしね。中里 全日本カデの廃止に関しては小学生学年別とは対照的に、ほとんど反響がありませんでした。中村 指導者の先生方や選手にとってもある意味難しい大会で、納得しやすかったのでしょうかね。全国小学生学年別大会の見直し中里 小学生学年別に関しては、非常に誤解されているところがあって、単純に大会をやめてしまう(廃止にしてしまう)と思われている方が多いようなんですが、そうではなくて、より良いイベントにしよう、全国小学生学年別大会は、廃止ではなく、大会の中身、在り方を見直そうということ5まいんど vol.32

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