まいんど vol.31 全日本柔道連盟
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サンドリーヌ・マルティネ(フランス)前編柔道人THE柔道を愛する仲間たち戦う人第17回なぜ柔道なのかサンドリーヌ・マルティネ(以降、サンドリンと呼びます)は、9歳のときに柔道を始めました。柔道は彼女のエネルギーを伝えるだけではなく、障がい(※)があるために学校で受けた不快感や嘲笑に対する彼女の怒りを抑えるためでもありました。サンドリンは普通の学校に通っていたので、周囲の生徒に追いつくのに苦労しました。視覚障がいがあるために、教室の最前列に座り、ボードに書かれていることを見るために立ち上がることもありました。彼女は、障がいがあり、大変な努力をしているのに、笑われるのは不公平だと思っていました。「私はいつも暴れ、反抗していました。結果としてそれは私の闘争的な性質を創り出すことになりました。本当は、私が周囲の人や私自身に対して成功できることを証明したかったのです」と彼女は振り返ります。フランスの道場には柔道の道徳的規範が示されているのですが、そのことでサンドリンは柔道に興味を持ち、障がい者の柔道の経験がすでにあるクラブに登録しました。「このクラブでは、私は他の子どもたちと同じように扱われました。ですから最初は障がいのない人たちとの試合に出ていました」彼女はあきらめる習慣がありません。「基本的に、格闘技は女の子らしくないと認識していました。しかし、そう言われるほど、そこに行きたくなりました」そのわずか数年後に、彼女は障がい者のための大会に参加しました。そして、2004年のアテネ・パラリンピックで女子柔道が実施競技に入ったことは、大きなモチベーションになりました。良い協力関係と成果2002年は、サンドリンの人生における画期的な年でした。彼女は当時、大学で生物学を専攻する学生でしたが、視覚障がいのために、講義に追いつくのに苦労していました。この年、彼女は障がい者のための最初のフランス柔道選手権に参加しましたが、それは必ずしもスポーツのキャリアを積もうという意味ではありませんでした。しかし、彼女はその大会で優勝してフランス代表チームに加わり、その年の世界選手権にも出場し銀メダルを獲得。アテネ・パラリンピックの代表ナンバーワン候補になりました。さらに、その年、彼女は代表チームのメンバーとの会話のなかで、理学療法士になるために障がい者を訓練する学校があることを知りました。彼女はその分野で働きたいと思っていましたが、障がいがあるために不可能だと思っていたので、その学校の存在に、非常にうれしい気持ちになりました。しかも、この学校に入学するために必要なすべての要件を満たしていたのです。また、2002年は、彼女が職業軍人である夫と出会った年でもありました。「私たちは一緒にお互いを助けるための良いバランスを見つけました。私は現役の選手でありながら、理学療法士としての仕事を持ち、夫婦で家族の生活を管理し、夫が数週間または数か月間ミッションに参加できるようにしています」お互いの協力により、彼女は世界選手権で2回優勝し、パラリンピックに4回出場して銀メダルを2つ、そして2016年のリオ・パラリンピックでは最高の結果である金メダルを獲得しました。その間には2人の子どもも産みました。そのとき、すでに30代になっていたサンドリンは、東京で開催される次のパラリンピックでキャリアを継続することを決意していましたが、東京パラリンピックではこれまでの階級から変更し、軽量級で戦うことに決めました。そして、東京で3つ目のパラリンピック銀メダルを獲得したのです。(次号に続く) 東京2020パラリンピックでフランス選手団の旗手を務めたサンドリーヌ・マルティネさんは、パラリンピックに5回の参加を果たし、金メダル1つ、銀メダル3つを獲得、そして世界選手権では2回優勝し、障がい者スポーツにおける憧れとなり成功の象徴となりました。 39歳で、2人の子どもの母親である彼女は、理学療法士であり、家庭生活と専門分野およびスポーツ活動において素晴らしいバランスをとっています。  フランスの障がい者スポーツに対する人々の認識を変えることに貢献している女性、サンドリーヌ・マルティネさんを前後編2号で紹介します。(文=ピエール・フラマン/広報委員)※サンドリーヌ・マルティネは、色覚異常、近視、乱視に悩まされており、視覚障がいのあるアスリートの分類ではB2と見なされています。PROFILEサンドリーヌ・マルティネ1982年11月10日、フランス出身2004年アテネ・パラリンピック以降、東京大会まで5回のパラリンピックに出場。2016年リオデジャネイロ・パラリンピックでは金メダル、2004年アテネ、2008年北京、そして2021年東京で銀メダルに輝いているほか、世界選手権でも2度、優勝を果たしている。理学療法士であり、2児の母でもある。26まいんど vol.31

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