まいんど vol.30 全日本柔道連盟
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メディカル編ゼミナール柔道JUDOこのコーナーでは選手、指導者を対象に、それぞれのスキルアップに役立つ話題(コンディショニング、トレーニング、栄養、心理、メディカル、コーチングなど)を紹介します。指導者のスキルアップのための東海大学スポーツ医科学研究所所長。日本整形外科学会専門医・スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツ医、神奈川県体育協会スポーツ医科学委員会トレーナー部会長。現在、全柔連医科学委員会副委員長で、96年から08年まで全柔連チームドクターを務めた。PROFILE解説:宮崎誠司東海大学スポーツ医科学研究所 所長【肩鎖関節の構造】鎖骨は肩甲骨と肩甲帯を構成し、この2つの骨は別々に動くのではなく、一つのユニットとして動きます。肩甲骨と鎖骨をつなげる肩鎖関節は、肩関節を構成する関節の一つでもありながら、体幹と肩甲骨を連結し体幹に腕を繋げる役割を果たしています。胸鎖関節と肩鎖関節により体幹と肩甲骨を連結し、体幹の運動に合わせて上肢が可動できます。肩甲骨は上腕骨と肩関節を構成しますが、肩関節は単に鎖骨を通して胸鎖関節の位置で胸骨に接しているにすぎません。胸鎖関節では動きが大きく、肩鎖関節では動きが小さいのが特徴で、このために肩甲骨は胸郭の上を動くことができます。肩鎖関節は鎖骨と肩甲骨の間の関節で、肩鎖靱帯(上肩鎖靭帯、下肩鎖靭帯)、烏口鎖骨靱帯(菱形靭帯・円錐靭帯)、三角筋・僧帽筋などにより保たれています。肩鎖関節では肩鎖関節靭帯のみの肩甲帯との連結よりも、鳥口鎖骨靭帯が鎖骨と肩甲骨の鳥口突起を強固に連結し、しかもそれぞれが連動して肩関節の運動に関与しています。肩鎖関節の関節面の形状は平坦で骨形態の適合性は悪く、関節面には適合性を高めるために関節円板が骨の間に存在し関節包とも連結しています。【受傷機転】柔道やラクビーなどのスポーツやバイク・自転車事故、作業中の転落・転倒などで肩の外側を強く打ちつけることにより受傷します。柔道では手を引っ張られながら、肩が畳に打ち付けられるような場面で受傷します。投げられたときに外からの強烈な外力を柔道は、柔道衣を持って投げる競技であり、上肢の怪我が少なくありません。小学生や中学生は、第12号でも述べたように鎖骨骨折が多いのですが、高校生以上になると鎖骨骨折の頻度が減り、肩鎖関節損傷(脱臼・亜脱臼)が増えてきます。下肢の怪我が多いので、下肢と比べるとその割合は少ないのですが、大学生における調査では、練習を休むような怪我の数は、上肢の肩関節(亜)脱臼や下肢の前十字靭帯損傷や半月板損傷よりも頻度が高いと言われています。肩鎖関節損傷28まいんど vol.30

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