まいんど vol.28 | 全日本柔道連盟
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2021.7 Vol.28公益財団法人 全日本柔道連盟会 長 山下 泰裕東京オリンピック・パラリンピック開催に寄せてContents直前特集東京2020オリンピックに挑む日本代表 4コーチに聞く各階級の見どころ 12東京2020パラリンピックに挑む日本代表 14オリンピック柔道競技記録1964年~2016年パラリンピック柔道競技日本代表成績1988年~2016年 22特集ブダペスト世界選手権大会日本、男女混合団体戦でV4達成!個人戦では5階級で優勝飾る 25連載やわらたちのセカンドキャリア 30やわら通信 32全国少年柔道協議会のページ&柔道を「続けよう」「始めよう」 34海外「JUDO」ホントのところ 36熱中症対策 誌上セミナー 38柔道ゼミナール~栄養&レシピ編 40委員会インフォメーション 43FROM事務局 50新型コロナウイルス感染症に罹患された方々に謹んでお見舞いを申し上げるとともに、いまなお続く新型コロナウイルスとの闘いに日々奮闘されている医療従事者をはじめとするみなさまに心より敬意を表します。オリンピック・パラリンピックが一体で開催される今夏の大会には、東日本大震災からの復興や共生社会の実現という重要なテーマが託されておりますが、新型コロナウイルスの世界的流行という困難な状況のなか、ひたむきに自己の可能性に挑戦する選手たちの姿は、長く暗いトンネルの先を照らす希望の光となるものと信じております。国内外で収束に向けたさまざまな取り組みが行われるなか、国民や選手、関係者にとって安心、安全な大会となるよう、日本政府、東京都、IOC、組織委員会、そしてスポーツ界が一体となり準備を重ねております。日本とオリンピックの関わりは、嘉納治五郎師範がアジア人として初めてIOC委員に就任した1909年に遡ります。嘉納師範は古流柔術の各流派をまとめ、自他ともに道徳的に高め合うことができ、心身ともに若々しく幸福に生きることに繋がる道として、青少年の育成のために講道館柔道を創始されましたが、「体育」の普及・発展にも熱心に取り組まれ、さらに、国境の隔てなく教育に力を注がれた教育者としても広く知られております。一方、時期を同じくして、近代オリンピックの創設者であるフランスのピエール・ド・クーベルタン男爵により、スポーツを楽しむだけでなく、スポーツを通して心身を鍛え、世界中の人々と交流し、平和な社会の実現に寄与する、「オリンピズム」という理念が提唱されます。嘉納師範が柔道や体育を通じて目指された理念と、クーベルタン男爵が提唱したオリンピズムとは何ら矛盾するところがなく、オリンピズムに賛同した嘉納師範のリーダーシップのもと、日本にオリンピックという存在が浸透していきました。私自身も柔道によって育てられた一人です。幼少時から飛び抜けて体が大きく、私のことが怖くて登校できないというクラスメイトが出るほどの問題児だった私は、親の勧めで小学4年生のときに柔道を始めました。柔道を通じて素晴らしい恩師たちに恵まれ、試合の勝ち負けだけではない、相手を敬う心、フェアプレーの精神を学びました。柔道や恩師たちとの出会いがなければ、私は小さい頃の暴れん坊のまま大人になっていたことでしょう。近年、心身の健全育成や健康維持の目的から世界中でスポーツに注目が集まっております。東京オリンピック・パラリンピックでスポーツがより身近になり、日本、そして世界の人々がスポーツの素晴らしさに接する機会が増えることは、嘉納師範の理念の実現に近づく大きな一歩であると言えます。初の日本開催となった1964年の東京オリンピック当時、私は小学1年生でした。テレビに釘付けになりながら、日本代表選手たちの活躍を見ていたのを覚えております。その感動は中学2年生のときに作文で「夢はオリンピックのメインポールに日の丸を仰ぎ見ながら君が代を聞くこと」と書くほどに強く残りました。最近夢を持てない子どもが増えているとの声を耳にします。今夏の大会において、世界最高峰の舞台で活躍する選手たちの姿を見た子どもたちが、夢や憧れを抱き、これからの人生を、目を輝かせて生きていくきっかけになればと願ってやみません。新型コロナウイルスは世界を分断させましたが、柔道、そしてスポーツには文化や国籍の違いを超え、同じルールで公平に競い合い、相互理解を深め合える力があります。分断から連帯へ。一生に一度の大舞台ですべてをかけて戦う選手たちの姿を通し、みなさまが夢や感動、誇りを抱き、世界の人々が希望を見いだせる大会であってほしいと願っております。3まいんど vol.28

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