まいんど vol.28 | 全日本柔道連盟
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▼左から長男・鷲(しゅう)君(1歳)、香菜さん、長女・奏暖(かのん)ちゃん(3歳)、匡さん海老沼香菜さんインタビュー 先日、ロンドン、リオ五輪の銅メダリストである海老沼匡選手が引退を発表されました。今回は、世界のトップアスリートとして走り続けた海老沼匡さんを支えた奥様、元柔道選手の香菜さんにインタビューをしました。――先日現役引退を発表した旦那様の海老沼匡選手。長い間、本当にお疲れ様でした! 最初に引退と聞いたとき、どのように感じましたか?海老沼香菜(以下、香菜)引退をすると聞いたのは、去年の12月くらいだったのですが、「来年4月の選抜(全日本選抜柔道体重別選手権大会)で終わりにする」ということだったので、「悔いの残らないように」と伝えていました。 コロナ禍で、最後の試合も開催されるのか、不安でもあったのですが、最後まで主人を支えて、アスリートの妻を全うしようと心に決めて、引退を受け止めました。――香菜さんから見た、引退を意識するきっかけは何だったと思いますか?香菜 本人はもう一度世界で戦いたかったと思いますが、去年の講道館杯(全日本体重別選手権大会)で負けてしまったので、本人もすごく悩んでいました。そこで負けたら世界選手権に選んでもらえないというのは、経験でわかっていましたから。勝っていれば、また世界を目指してとなっていたと思うのですが。講道館杯で負けたことが、一番の要因だったみたいです。――勝ち続けることは、本当に大変ですし、長い期間、本当に凄いことだと思います。結婚したのは、2014年、ロンドンオリンピック後、リオデジャネイロオリンピックに向けて、というときですね。結婚する前から活躍されていた海老沼選手ですが、結婚してから一番印象に残っているのは、どの試合ですか?香菜 2019年のグランドスラム大阪です。73㎏級に階級を上げてから、全然結果を出すことができずにいました。難しくて、本人も苦しんで努力して、というのが続いていましたが、決勝戦で橋本壮市選手に勝って優勝という結果が出たのがこの試合で、本人もとても喜んでいたので、私自身も嬉しくてとても印象に残っています。――66㎏級のときはとても減量がきつかったとうかがっておりますが、そのときのほうがやはりサポートは大変でしたか?香菜 66㎏時代、73㎏級時代関係なく、どんなときも同じように辛かったです。――香菜さんは、ご自身もトップアスリートとして活躍されていたので、いろんな経験があると思いますが、支える側になって一番大変だと思ったことはどんなことですか?香菜 やはり、減量に関することです。一番多いときは12㎏くらいの減量が必要でしたが、筋量が66㎏以上あり、筋肉を減らしながら練習をしなければならないという状況だったので、減量のサポートが一番大変でした。あとは、家でストレスを感じさせないような環境づくりですね。常に柔道のことしか考えていないような人なので、家に帰ってきても柔道のことを持ち込んでしまうのはあまり良くないかもしれないと思い、ONとOFFのメリハリをつけられるよう、一緒にドラマを観るなど、気を紛らわせるようなことをしていました。――コロナ渦、柔道家の奥様ならではのサポートなどあれば教えてください!香菜 一度目の緊急事態宣言のときは、自宅で打ち込みを受けたり、トレーニングの手伝いをしたりしていました。――海老沼選手にとって、結婚後にプラスになったと感じられたことはありますか?香菜 子どもができたことだと思います。子どものために頑張るというのは、本人にとって大きなモチベーションになったと思います。――今後、柔道とはどのような携わり方をしていきたいですか?香菜 いまは3歳と1歳の子どもたちの子育て真最中ですが、将来的には柔道の指導者になれたらいいなと思っています。また、柔道普及のためにできることがあれば取り組んでみたいとも思っていますし、柔道には何かしら携わっていきたいです。子どもにも柔道をやってほしいと思っています。~ここからは、旦那様である、海老沼匡さんにもご質問をさせていただきました。~――ご主人にとって、どのようなサポートがありがたかったか。独身のときと意識は変わりましたか?海老沼匡(以下、匡)結婚によって新たに家族ができ、自分が勝つことで喜んでくれる人が増えたので、それがモチベーションになりました。一方で、負けて一緒に悔しがってくれる姿を見ると、もっと頑張らなくてはいけないと思えたので、家族の存在が大きなモチベーションになっていました。――先程、奥様から家でなるべく柔道を引きずらないように工夫をされていたとうかがいましたが、ONとOFFの切り替えはうまくなりましたか?匡 切り替えがあまりうまくないので、難しい面もあったのですが、年々、慣れていったように思います。妻や子どものおかげで、家に帰ったらOFFになれる時間を多く作れるようになったことが、競技面にも活きたと思います。――結婚される前は、私生活においても、大きな大会前など、常に緊張感をもって過ごされていたのですか?匡 独身時代も、道場とそれ以外では、自分のなかでは分けていたのですが、その日の練習の調子によっては引きずることも多かったかもしれません。でも、家族と過ごすようになって、引きずる時間が減り、やわらぐ時間が増えたと思います。子どもに勝つ姿を見せたいと思っていたので、大きな存在でした。――コロナ禍で奥様に打ち込みを受けてもらったそうですが、本気で技に入っても大丈夫でしたか?(笑)匡 妻は、現役を引退してから時間が経っていることもあり、最初に打ち込みを受けてもらった次の日には身体が痛いと言っていたので、5~6割くらいの力で入っていました(笑)。――指導者としての抱負を聞かせてください。匡 今はまだ、自分が思い描く指導者像というものが明確になっていませんが、引退して間もない今だから伝えられる感覚があると思っています。そういう、今の自分だから教えられることを、まずは伝えたいと思っています。――指導者としても、ご活躍されることを期待しております!※文中敬称略 やわら通信〜全国のやわら情報をお届けします〜このページでは女子柔道に関する情報を募集しております。小さな情報でもかまいません。P50の応募先にお寄せください。お待ちしております。海老沼香菜えびぬま・かな(旧姓:阿部)宮城県石巻市出身。東北高校→三井住友海上火災保険株式会社。2012年、20 13年世界選手権大会(団体)金メダル。2013年ワールドマスターズ63㎏級金メダル。2011年、20 13年全日本選抜体重別選手権大会63㎏級優勝などPROFILE32まいんど vol.28

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