まいんど vol.27 | 全日本柔道連盟
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メディカル編ゼミナール柔道JUDOこのコーナーでは選手、指導者を対象に、それぞれのスキルアップに役立つ話題(コンディショニング、トレーニング、栄養、心理、メディカル、コーチングなど)を紹介します。指導者のスキルアップのための東海大学スポーツ医科学研究所所長。日本整形外科学会専門医・スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツ医、神奈川県体育協会スポーツ医科学委員会トレーナー部会長。現在、全柔連医科学委員会副委員長で、96年から08年まで全柔連チームドクターを務めた。PROFILE解説:宮崎誠司東海大学スポーツ医科学研究所 所長足関節捻挫・靱帯損傷捻挫(ねんざ)というと軽いケガと思われがちですが、捻挫とは受傷状況を示す一方、靭帯損傷というのは構造上の変化でありどこがどの程度傷んだかを示します。正しく理解し正しく処置をして、再受傷を防ぐことが重要です。【解剖と機能】足関節は脛骨と腓骨・距骨・踵骨から構成される距腿関節・距骨下関節・遠位脛腓関節の複合関節の総称です。足関節はこれらの関節が複合的な動きをしています。距腿関節は、腓骨と脛骨が合わさり、ほぞ穴のような関節窩を形成し、距骨がそのほぞ穴状の関節窩に収まるような構造です。距腿関節の直下で距骨と踵骨は2か所の関節面を有し距骨下関節を作ります。距骨下関節は矢状面(底屈背屈)、冠状面(内反外反)、 水平面(内転外転)の動きがあり、これらの3方向の運動により回内または回外運動が発生します。足関節の動きは底屈、背屈が主で、構造的に内反や外反といった動作の少ない1軸性に近い関節です。距腿関節だけでは背屈と底屈の動作が主な運動で外転・内転運動は極めてわずかな動きしかできません。一方、距骨下関節の運動軸は斜め方向を向いています。そのため、距腿関節の下にある距骨下関節の共同運動により内返し(内反:つま先と足の底が内側に向かい、同時に足部の外縁で立つような動き)、外返し(外反:つま先と足の底が外側に向かい、同時に足部の内縁で立つような動き)ができます。足関節の靱帯1・外側を支える靱帯距腿関節の外側を支える主な靱帯は、前方から前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯で構成されています。前距腓靱帯は前方で、後距腓靱帯は後方で腓骨外踝と距骨をつなげます。踵腓靱帯は外踝下端から後下方へ斜走して踵骨外側面に付着します。これらの靱帯損傷により不安定性が生じ、距骨が脛骨や腓骨と衝突し、遊離体や骨棘などの原因となります。このほか踵骨から立方骨と舟状骨につながる二分靭帯(別名Y靭帯)があります。柔道の外傷は中学生や高校生では骨折、捻挫・靭帯損傷の割合が同じくらいありますが、大学生や社会人になると捻挫・靭帯損傷が最も多くなります。足関節の捻挫・靭帯損傷は膝内側側副靭帯損傷に次いで多く発生します。大学生柔道選手の調査では1年間に8~9%に発生すると言われ、これは11人いれば1年間の間に誰かがケガをするということになります。今回はこの足関節靱帯損傷について述べたいと思います。足関節捻挫・靱帯損傷図1 足関節の構造図2 足関節の名称図4 足関節外側の靭帯図3 足関節(距腿関節)のほぞつぎ構造脛骨距骨腓骨脛骨踵骨距骨腓骨距腿関節遠位脛腓関節距骨下関節腓骨脛骨距骨滑車二分靱帯後脛腓靱帯前脛腓靱帯後距腓靱帯前距腓靱帯踵腓靱帯28まいんど vol.27

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