「姿三四郎」ポルトガル語版出版へ(07.5.23サンパウロ新聞掲載記事より)

「姿三四郎」ポルトガル語版出版へ(2007.5.23サンパウロ新聞掲載記事より)


「姿三四郎」ポルトガル語版出版へ~柔道普及と理念の浸透を目的に~


左から岡野会長、翻訳家の林氏、関根副会長



≪全伯講道館柔道有段者会 世界初の外国版発刊≫

全伯講道館柔道有段者会(岡野脩平会長)は日本政府の助成を受け、念願の「姿三四郎(富田常雄著)」のポ語訳版を九月の世界選手権開催を目処に発刊することを決定した。

目的はブラジル社会への柔道普及とその理念を広く知ってもらうことで、同書としては世界に先駆けて初めての外国語翻訳版となる。

今年一月には林慎太郎氏による二年間の翻訳作業も無事終了。来年の移民百周年を前に、日本文化と武道精神を伝える七百ページにおよぶ書籍の完成が期待されている。

≪翻訳は林慎太郎氏 日本古来の精神の訳文に苦労≫

「姿三四郎」のポ語訳は十年前からの懸案事項で、「単に試合で勝ってメダルを獲るためでなく、柔道の精神を通じて己を完成し、世の補益に尽すという究極の目的を青少年に伝えるために企画した」と岡野会長は、その意義を語る。

当初、翻訳は「宮本武蔵(吉川英治著)」などをポ語訳化したことで有名な後藤田玲子氏に依頼したが、体調の問題などで断られ頓挫。白羽の矢を立たされたのが、後藤田氏の兄で日本の作家・谷崎潤一郎氏の甥にあたる林氏だった。

林氏はサンパウロ大学工学部を卒業後、ブラジル東芝の技術者として長年勤務。技術書のほか、大江健三郎氏の著書なども翻訳している。自身も幼少の頃に柔道経験があるが、「姿三四郎」については日本古来の精神部分による抽象的な表現が多く、訳すのに苦労したという。

「例えば、『気』という言葉がありますが、ポルトガル語では様々な解釈ができ、一回訳しても納得がいかず、何回も練り直したりしました」と林氏は、今回の翻訳の難しさを振り返る。

同書作成の予算は約六万ドル。有段者会では昨年、翻訳助成金四千八百ドル、印刷・製本費用助成として七千二百六十二ドルをそれぞれ申請。国際交流基金サンパウロ日本文化センターを通じた日本政府からの資金援助がすでに決定している(翻訳助成分は今年三月に受取済)。

同書作成にあたっては、昨年リオで開かれた柔道国際大会の席上で、世界柔道連盟教育理事の山下泰裕氏(ロサンゼルス・オリンピック金メダリスト)の賛同も得ており、「正しい柔道普及のために全力で出版にあたってもらえるよう応援する」という同意の言葉ももらっているという。

ポ語訳版は今後、編集・校正作業などを行い、今年九月にリオで開催される柔道世界選手権に間に合うように準備が進められている。発行部数は三千部。一冊六十五レアルで販売される予定。ポ語版発刊の反応を見て、今後スペイン語での翻訳も行っていく考えだ。

二十二日、案内のために来社した岡野会長、関根隆範副会長、林氏の三人は「単に読者に読ませる書物ではなく、日本文化としての哲学や武士道の精神を、柔道を通じて残していきたい」と述べ、助成を行った国際交流基金と出版先のトッパン・プレスなど携わった関係者に感謝の意を示している。

(2007年5月23日付サンパウロ新聞)