第24回世界柔道選手権大会
カイロ世界選手権での4日間にわたる熱い戦い、その見どころを紹介してみた。
(注:海外出場選手は予想)
初日(9/8)の戦い
日本は初日にベテラン3人が出場するが、きっちり結果を残すことで一気に流れを引き寄せたいところだ。+100kgと+78kgは無差別との関係もあり誰が出場するか不透明な部分も多い。

男子
+100kg
 
前回、大阪大会で優勝した棟田康幸が連覇に挑む。棟田は05ドイツ国際で3位に終わったが、その時負けたミハイリン(ロシア)−01年大会2階級制覇−との対決が最大のヤマになりそうだ。懐が深く上から引きつけるスタイルにどう対応できるか。ロシアからはアテネ銀メダリストのトメノフがエントリーするかもしれないが、棟田は苦手としていない。
この他気になるのは試合巧者のファンデルヒースト(オランダ)、アテネで鈴木から「技あり」を奪い、嘉納杯で「隅返」を連発し活躍したくせ者リュバック(ベラルーシ)などである。実力的には棟田の敵ではないが、動きが止まり単調になる悪い癖がでれば、相手の術中にはまる危険性がある。しかし棟田との対戦を避けて無差別を選ぶ選手も少なくないと思われる。

100kg
大阪大会では無差別、アテネでは+100kgでチャンピオンになった鈴木桂治だが、この階級では世界初挑戦。アテネの金メダリストのマカラウ(ベラルーシ)は特に心配ないだろう。もし+100kgのリュバックが出ても問題ない。最大のライバルは実力者のゼービ(イスラエル)、ユラック(ドイツ)、それにアテネで井上を翻弄したファンデルヒースト弟(オランダ)、今年のヨーロッパ覇者アンベール(フランス)などであるが、体調十分で望む限り鈴木の優位性は動かない。大ベテランのコバチ(ハンガリー)−92五輪&93世界チャンピオン−は決勝まで登る力はないが早いラウンドで当たった時は要注意だ。

女子
+78kg

アテネで頂点に到達した塚田真希だが、05フランス国際も優勝しており、優勝候補筆頭だ。アテネで「技あり」を取られたベルトラン(キューバ)は出場せず、ライバルは中国選手だけかもしれない。大阪大会優勝のソン・フーミンらのベテランが出れば強敵だが若手だと塚田が一枚上手。ヨーロッパ覇者のブライアント(イギリス)やプロコフィエワ(ウクライナ)、ドングサシビリ(ロシア)などもいるが、塚田の敵ではないと思われる。

78kg
このクラスは阿武教子の引退で、一気に戦国時代に突入した感がある。その中で有力なのは、ヨーロッパ覇者のルブラン(フランス)とラボルデ(キューバ) 、またアテネ2位のリウ(中国)のベテラン勢。今回日本初代表となった中澤さえは、アジア選手権優勝とフランス国際3位の結果を残し、ラボルデにも勝っている。他にもクーネン(ドイツ)やマトロソワ(ウクライナ)など強豪がひしめき、若い中澤にとって決して楽な試合はないだろうが、今の日本代表は世界で最も恐れられており、緒戦で勢いに乗ってしまえば一気に頂点をねらえる。またこの日3人のベテラン日本代表と一緒に闘えるのは心強いだろう。

第2日目(9/9)の戦い

男子
90kg 

アテネで豪快な柔道で銀メダルを獲得した泉浩が、カイロでは金を目指して戦う。しかしこの階級はライバルが多い。アテネ金メダリストのジビアダウリ(グルジア)は世界選手権2大会続けて2位で、当然今回の優勝候補筆頭だ。また大阪チャンピオンでアテネで泉と死闘を繰り広げたファン・ヒーテ(韓国)、アテネ3位のタオフ(ロシア)やヨーロッパチャンピオンのアラルザ(スペイン)などに加え、ベテランのフイジンガ(オランダ)も侮れない。小柄ながらも体力面でライバル勢に負けない泉のしぶとさと多彩な攻撃力が生きたとき頂点が見えてくるだろう。


81kg
この階級、00年シドニー五輪で滝本が優勝したが、世界選手権では95年千葉大会で古賀稔彦(当時は78kg級)が勝って以降、日本はメダルにすら届いていない。今回、初出場の小野卓志がアジア選手権優勝とフランス国際3位の実績を持ってメダルに挑む。
 優勝候補筆頭はなんと言ってもアテネ金メダリストのイリアデス(ギリシャ)だ。多彩な攻めとグルジアの血をひく力強さで一階級上で出場したヨーロッパ選手権でも圧勝した。足腰が強く、決して投げられないのも強みだ。彼に続くのがヨーロッパ覇者のビッショフ(ドイツ)、アテネで塘内がほんろうされたノッソフ(ロシア)、クラウチック(ポーランド)あたりだろう。小野は早く自分の組み手になり、試合の主導権を握れるかが鍵となるだろう。

女子
70kg

この階級はやはり世界2連覇中でアテネ金の上野雅恵を中心に動くであろう。フランス国際ではライバル、ボッシュ(オランダ)に攻め負け2位に甘んじた。ボッシュは長身で懐が深く上野もやりづらい相手だ。アテネでは袖釣込腰で一蹴したが、今度はそう簡単にはいかないはずだ。この他スカピン(イタリア)、べ(韓国)などがいるが、ここでは上野とボッシュの一騎打ちとなりそう。上野は早い攻撃と、投技から寝技への流れを大切にしていけば、3連覇が近くなる。

63kg
アテネで圧倒的な勢いで優勝した谷本歩実が今回はどのような戦い方を見せてくれるだろう?ライバルは少なくない。アテネで敗れたハイル(オーストリア)やヨーロッパ覇者のウィルブーズ(オランダ)、フランス国際で敗れたデコッス(フランス)らに加え、キューバのベテラン、ゴンザレスや大阪大会の覇者しぶといクルコウェル(アルゼンチン)などもいる。 しかし、谷本が最後まで集中力を保ち、自分の間合いで戦えば、アテネの再現となるだろう。

第3日目(9/10)の戦い

男子
73kg 
直前に体調を崩しオリンピックの舞台で全く自分の柔道ができず苦しんだ高松正裕が、カイロで復活を期す。昨年フランス国際で優勝するなど海外勢からも警戒されていた高松だが、世界のレベルは高い。アテネ&大阪チャンピオンのリー(韓国)は出場せず、代わりにキム・ジェブンがアジア選手権を制して出る予定だ。こちらの方がやりやすいだろう。アテネメダリストの中で唯一出場するだろうギルヘイロ(ブラジル)は世界ジュニアチャンピオンで体力もあり要注意。ヨーロッパ選手権で勝ち上がったブラウン(ハンガリー)、ラズボゾフ(イスラエル)、フェルナンデス(フランス)、ケフキシビリ(グルジア)など力勝負に強く、しぶとい選手が少なくない。高松がこの乱戦を制するためには、自分の間合いできっちり戦えるかが鍵となる。もちろん長旅と猛暑の中でのコンディショニングに抜かりはないはずだ。

66kg
アテネで頂点に立った内柴正人が世界選手権初制覇を目指す。トレトリ国際で肘を怪我したようだが問題はないだろう。ライバルはなんと言ってもミレスマエイリ、世界選手権3連覇を狙うが、欠場したアテネの悔しさをはらしに全力で向かってくるだろう。アレンシビア(キューバ)、アジア覇者のツァガンバータル(モンゴル)などもいるが、寝技に特徴があるヨーロッパ2位のアングバリ(ハンガリー)には要注意。また一つ階級を上げてきた元世界チャンピオン、ルニフィ(チュニジア)も気になる。しかし順調にいけば、試合場を駆け回りどこからでも技を繰り出せる内柴とパワーあふれるミレスマエイリの一騎打ちとなるだろう。

女子
57kg
中澤とともに現役学生で初出場となる宮本樹理が出場するこの階級はケー・スンヒ(北朝鮮)とボニッシュ(ドイツ)の力がずば抜けている。アテネと大阪ともに決勝はこの2人の対決であったが、今回はケーは出場しない様子。となると01年大会の決勝コンビ、ルペティ(キューバ)、フラベンスタイン(スペイン)の2人や、ヨーロッパ覇者のソニナ(ロシア)、アジア大会で宮本に勝ったキングバット(モンゴル)なども上位を狙ってくる。課題の組み手対策を仕上げて臨めば、まだ海外勢に知られていない宮本にも十分勝機がある。

52kg
準決勝戦で奇跡の逆転勝ちを見せるも決勝であっけなく抑え込まれた横澤由貴が世界初タイトルを取りに、カイロへ向かう。今回はアテネチャンピオンの中国選手と大阪チャンピオンのサボン(キューバ)は出ないはずで、ライバルはヨーロッパ制覇のヘイレン(ベルギー)とアルアス(ルーマニア)、
ドイツ国際で負けたリザ(フランス)、アジア選手権で負けたキム・キョンオク(韓国)あたりが気になる存在。横澤は積極的な攻撃で早い段階で波に乗れば一つずつ上がってきたピラミッドの頂点に立てるはずだ。

第4日目(9/11)の戦い

男子
60kg
実力者と言われ続けるもなかなかチャンスが巡ってこなかった江種辰明が、カイロでいきなり世界の頂点に躍り出ることができるか?そのためにはいくつかの関門がある。まずフランス国際で負けたペッシャー(オーストリア)、アジア選手権で負けたチョー・ナムスク(韓国)の他、ヨーロッパチャンピオンのナザリアン(アルメニア)、アテネ2位のヘルギアニ(グルジア)などといったグルジアスタイルの猛者達をきっちりしとめることができるか?試合の後半に失点がないよう、最後まで安定した試合運びができるかがポイントとなろう。

無差別
本来ならもっと早くこの大舞台に立っていてもおかしくない高井洋平が大学の先輩鈴木桂治に続いて無差別の頂点を目指す。ロシアからエントリーが予想されるトメノフがいる。早い段階で当たりたくない相手だが、間合いに気をつけさえすれば実力では負けない。この他、ファンデルヒースト(オランダ)、トェルツァー(ドイツ)、タングリエフ(ウズベキスタン)、ローダキ(イラン)などもいるが、いずれも高井の相手ではない。正しい姿勢を崩さず、自信を持って攻めていけば頂点を極めることができる。

女子
48kg
谷不参加のニュースはあっという間に世界を駆けめぐり、海外のライバル達、特にジョシネ(フランス)は気持ちが高ぶったことだろう。アテネと大阪で2位の彼女は今度こそはと意気込みも高くカイロ入りするはずだ。しかしその彼女を2年連続フランス国際で破ったのが北田佳世である。国際大会優勝歴が豊富な彼女は世界初挑戦ながら金メダル最有力といえるだろう。この他、ヨーロッパ連覇のドゥミトル(ルーマニア)、アテネ3位のガオ・フェン(中国)などもいるが、プレッシャーをはねのけて粘りのある背負投を軸にした自分の柔道ができれば、北田に敵はいないだろう。

無差別
01年大会で銀メダルを獲得し、中国重量級の厚い壁を突破しようとしたその時、選手生命を脅かす大けがに遭った薪谷翠。奇跡のカムバックを果たし臨んだ地元大阪大会では自分の柔道がとれないまま初戦敗退。ライバル塚田はオリンピック金メダルを獲得・・・そして3度目の世界挑戦を迎えた。気になる中国は大阪優勝のトン・ウェンがエントリーしている。他にはブライアント(イギリス)、ドングサシビリ(ロシア)、プロコフィエワ(ウクライナ)あたりが気になるが、問題は中国選手だけだ。地獄を味わい苦難を乗り越えた薪谷は、きっと一皮も二皮もむけた戦いができるはずである。最終日、金メダル独占となるのも夢ではない。

中村勇(広報委員会)

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