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第28回全日本女子柔道選抜体重別選手権大会

2005 カイロ世界柔道選手権大会 日本代表最終選考会

【戦 評】

78kg超級

塚田真希が優勝するも、世界代表は皇后盃決戦へ
アテネ五輪金メダルの塚田真希(綜合警備保障)は福岡国際、今春のパリ国際と連続して制しまさに順風満帆かと思われたが、復活を期す薪谷翠(ミキハウス)らの春風によって翻弄され苦戦を余儀なくされた。
塚田は初戦こそ中野公洋子(セコム)を3分35秒大外刈で女王の貫禄を見せたものの、準決勝では杉本美香(筑波大)の粘りに合い苦戦、「指導」(消極的)でなんとか退け決勝へ。
一方の復活を期す薪谷。この大会、そして皇后盃で一気に逆転して世界代表を狙いたいところ。初戦は駒木奈緒美(東海大)を3分34秒横四方固で格の違いを見せ付けた。準決勝はベテラン小松崎弘子(自衛隊体育学校)を小外刈「技あり」から横四方固に極めて3分53秒合技「一本」。塚田への挑戦権を手にした。
決勝戦。身長差7cm、体重差23Lと明らかに一まわりほど塚田が大きい。その体格差がそのまま試合運びにつながったか。塚田は薪谷を引き付けたままの体勢からの体落、さらには小外刈のフェイントからの体落を仕掛ける。対する薪谷は自分の間合いがとれないまま体落、そして膝を突いて四つんばいになるといった試合運び。塚田の内股に薪谷が大きく浮く場面もあったが技ポイントはなく、両者に「指導2」が与えられたまま決着はゴールデンスコア方式に持ち込まれた。延長でも同じような展開のなか、1分10秒に薪谷に与えられた「指導」が決勝ポイントとなった。
塚田は3連覇を決めたが、この階級と無差別は4月17日の皇后盃の結果を受けて決定される。皇后盃での再戦、そしてすっきりとした決着を期待したい。(渡邉)

78kg級

オール一本勝ち!混戦を力でもぎとった中澤さえが新女王に!
2分19秒、勝利のブザーと同時に中澤さえ(淑徳大)は思わず右手で握り拳をつくって、喜びを控えめに表現した。新女王が誕生した瞬間だった。
決勝戦は初戦、準決勝と連続一本勝ちと好調な中澤、ながらくナンバー2に甘んじていたベテランの松崎みずほ(コマツ)との戦いとなった。この試合に「世界への切符」がかかることを意識してか、思い切りの良い技がでない。先に仕掛けたのは勢いのある中澤で1分23秒に払腰を、それに対抗するかのように松崎は右背負投を見せた。
1分50秒「場外」の後、組み際に放った中澤の大外刈が「有効」となり、そのままを袈裟固に極めオール一本勝ちで初優勝を遂げた。
世界選手権の代表を獲得した中澤は、確実に力をつけている。残された時間、更に力をつけて、世界の新女王に輝いて欲しい。

ポスト阿武をねらった積極的な試合展開! 若手が台頭!
この大会の優勝者が「カイロの世界代表」との秘めた思いからか、1回戦から積極的な技の攻防が繰り広げられ、一瞬たりとも目が離せなかった。
その中で、アジア選手権・講道館杯を制し、日の出の勢いで力をつけてきた中澤が3試合を全て一本勝ちで代表の座を射止めた。準決勝の反則勝ち(内股で頭から突っ込む)の誘因も、中澤が「有効」でリードした後も攻め続けていたことにあると思われる。
中澤は、阿武のような圧倒的な強さはまだ持ち合わせていないが、21歳と伸び盛りの可能性を秘めている。また、堀江久美子(兵庫県警)や鳥谷部真弓(帝京大)など、年齢の近い選手が互いに刺激となって成長してきていることも嬉しいことである。他の選手が今後成長していくためにも、中澤が今回の優勝で自信をつけ、世界の舞台で活躍してくれることを願う。(三浦)

70kg級

気持ちを持続させたメダリスト・上野雅恵が制す。
アテネ五輪金メダリストの上野雅恵(三井住友海上)にとっては、「勝ち続けること」のプレッシャーはとてつもなく重いのかも知れない。五輪という“大目標”を大願成就で達成した安堵、余韻に浸る間もなく多忙な日々。一度は引退を決意したが、妹・順恵の頑張りに刺激を受けて復帰を決意したという。しかし、2月のパリ国際では優勝を逃し、さらに花粉症で体調管理も不十分。3月半まで柔道から離れたが、妹、周囲の励ましに気持ちを奮い立たせて今大会に望んできた。
上野は初戦の森島直美(セコム)こそは3分35秒得意の袖釣込腰で一蹴したものの、準決勝からは苦戦で、岡明日香(コマツ)を「指導」(消極的)で降しようやく決勝へ。
一方からは、世界・日本学生王者の七條芳美(了徳寺学園)がベテラン・貝山仁美(三井住友海上)、福岡国際優勝の新鋭・渡邉美奈(コマツ)をいずれも「有効」の辛勝で勝ち上がってきた。
決勝戦。上野は37秒小内刈「効果」で先行すると、七條も1分36秒小外刈「効果」で追いつく一進一退の攻防。足技合戦の様相を呈するなか、2分13秒に上野が大内刈「効果」ポイントを挙げ、そのまま逃げ切った。上野は2年ぶり4度目の優勝。
直後の試合で順恵も優勝し「妹の優勝が自分のことのようにうれしい」と涙をこぼした。妹は世界代表に選ばれず、姉妹出場はかなえられなかったが「いつかは2人で」という思いを秘めて世界選手権3連覇に挑む(渡邉)

63kg級

足技・技数で圧倒 上野順恵 優勝!
残り37秒、上野順恵が放った朽木倒に主審は「効果」、しかし2人の副審は手をあげて大きく左右に振った、「効果は無い」とのアピール。谷本歩実が果敢に攻めたのは、その後の30数秒だった。しかし、粘り強い上野は、逆に足技を飛ばし谷本に攻めきらせずに、勝利のブザーを聞いた。技のポイントは無かったが、序盤の上野は足技、体落を掛け続け、谷本の攻撃ペースを許さなかった。1分24秒、受けにまわっていた谷本に「指導」が与えられた。中盤以降も上野は常に先に組み手をとり、体落を中心に攻め続けた、勝利のブザーを聞いた。
上野は世界選手権代表に選出されなかったが、確実に力をつけている。今回の優勝が糧がとなって、さらに彼女を大きく成長させるであろう。

2強時代に突入! 実力接近の谷本・上野
谷本と上野の2強の戦いであった。初戦の谷本は、平井希(東海大)を得意の背負投、上野も小澤理奈(山梨学院大)をタイミングの良い出足払で一蹴した。2回戦は、共に苦しんだが、地力の違いは十分あっての勝利といえる。
「初の姉妹での世界代表」かと思われたが、谷本が実績を買われてカイロの世界選手権代表となった。しかし、上野は今年のパリ国際で優勝するなど、対外国勢の評価も上がっている。今回五輪王者を破ったことで、十分に世界に通じる力をアピールし、さらに自信をつけた。
谷本23歳、上野21歳、さらに昨年の福岡国際を優勝した徳久瞳(三井住友海上)も22歳と若い力が台頭している。2強から三つ巴となれば、この階級は確実にレベルアップする。今後、ますます目が離せない。(三浦)

57kg級

“一本”の技で宮本樹理は世界へ名乗りあげる。
五輪、世界選手権経験者がいない、誰が勝ち上がってもおかしくないこの階級。平等に与えられたチャンスを宮本樹理(帝京大)が「一本」でつかみとり、世界初挑戦を決めた。
本命にあげられていた昨年の本大会覇者の岩藤理恵(三井住友海上)は初戦で町田郁子(山梨学院クラブ)の気迫に圧倒されたのか「有効」を奪われ敗退。
宮本は昨年の学生王者、講道館杯も全試合一本勝ちで制し勢いに乗ってヨコハマにやってきた。だが、初戦は広村麻衣(東海大)に「有効」を先取される苦しい展開のなか4分30秒内股で逆転。準決勝でも技のポイントが奪えず「指導」の優勢勝ちで決勝へコマを進めた。
一方からは、唯一のクラブ所属の町田がしぶとい柔道で勝ち上がってきた。準決勝は篠田理子(帝京大)をゴールデンスコア1分47秒に背負投であげた「有効」を守りきった
決勝戦。宮本、町田のいずれも初優勝を狙う。互いに攻めあぐね一進一退の攻防が続き、残り1分を切り旗判定に持ち込まれるかと思われたが、宮本が縦四方固に極めて一本勝ち。宮本はうれしい初優勝。
世界選手権代表には優勝した宮本が選出された。(渡邉)

52kg級

粘り強さが光った。君島奈津子 涙の初優勝!
ゴールデンスコア40秒、君島(警視庁)の右足が宝(コマツ)の足に掛かった!渾身の力で畳に押し倒した、「有効」「それまで」。まさに死闘であった。
君島は、1回戦佐藤愛子(筑波大)との戦いで延長5分計10分間の奮闘の末に、3−0の旗判定で勝ち上がった。一方の宝は準決勝、アテネオ五輪銀メダリストの横澤由貴(三井住友海上)から肩車「有効」を奪い、追撃をしのいで勝ち上がった。
決勝戦。前半は宝が背負投,肩車と攻めるも君島にさばかれる。中盤から君島の体落から小外刈の連絡技がでるが、これも決まらず。互いに、優勝を意識してか投げ切るまでの柔道ができないまま、5分が経過した。延長、ゴールデンスコアに入り、君島が一方的に攻め、最後の力を振り絞って勝利を手にした。

アテネ銀メダリスト横澤敗れる波瀾! 実力接近か?
頭一つ抜けていたアテネ五輪銀メダリスト横澤が準決勝で敗れる波瀾があった。昨年の講道館杯2位の宝は横澤をよく研究し、前半に奪ったリードを死守したといえる。初めて追われる立場に立った大会で、横澤は良い経験をしたであろう。これを糧に、カイロの世界選手権までに課題を克服し、世界の頂点に期待したい。また、昨年後半は精彩を欠いた君島が、この大会を目標に努力を重ね、粘りある試合運びの中で苦しみながらも優勝した。今後世界の舞台に向けての活躍を願う。他の選手も自分の組み手になった時に攻めきれる力を備えれば、十分に世界で活躍できる力をもっている。実力が接近してきているので、互いの切磋琢磨が階級としてのレベルアップにつながり、北京五輪での頂上も視野に入ってくるであろう。(三浦)

48kg級

谷、薄氷を踏む思いでつかんだV14。
アテネ五輪金メダリストの谷亮子(トヨタ自動車)と北田佳世(ミキハウス)の3年連続で同じ顔合わせとなった決勝。僅かに“勝利”への執念が上回った谷が北田を返り討ちにした。
谷は3月中旬にインフルエンザ、今月4日には右手薬指を痛め、釣り手が使えない状態だった。初戦は昨年の高校2冠の山岸絵美(三井住友海上)に粘りの柔道で「指導3」の優勢勝ち。準決勝は3年前に敗れた福見友子(筑波大)を内股透で圧倒したが、本来の動きからはほど遠かった。
一方の北田は小林咲里亜(夙川学院高)を谷落「技あり」、杉野沙由理(筑波大)を合技で降して勝ち上がってきた。
決勝は手の内を知り尽くした者同士、互いに思い切った技を繰り出すことなく、決め手を欠いたままの展開が続き、両者「指導」(消極的)のままタイムアップ。決着はどちらかがポイントをあげた時点で勝負が決まるゴールデンスコア方式に持ち込まれた。「流れを変えようと攻めに徹した」谷は猛然と強引とも見受けられる攻めに転じた。「場外」でマテがかかると、主審は北田に「指導」(消極的)を宣告、わずか27秒であっけなく谷が14度目の優勝を決めた。
谷は五輪2連覇以来の復帰戦。ポイント狙いの柔道は谷らしくなかったが、キャリアの差と修羅場をくぐってきた勝負勘は健在だった。「結果が出なければ終わり、体調が悪くても、途中でやめる訳にはいかない。記録を伸ばそうとすればやる気が出る。記録こそが私の力」。世界選手権7連覇へ。「記録」を支えに29歳の女王は歩み続ける。
谷の不調が報道されるなか終わってみれば、やはり谷の優勝。試合運びの巧さが際だった。満身創痍、そして盟友の阿武教子、日下部基栄が引退するなかで「寂しい。でも、目指すゴールが違う」と孤高の女王はわが道を行く。対する、いわば挑戦者達にはふがいなさを感じざるを得ない。確かにポイントを奪えば勝ちは勝ちであるが、アテネ五輪で証明されたように日本柔道の持ち味は「一本」で投げきる技である。目先の勝ちにこだわるのではなく、「一本」の先に打倒・谷、そして世界への道が開かれるのである。「代表選手選考会」と銘打った試合ならば、なおさらのことである。
唯一の光明は準決勝で福見友子が谷に思い切りよく放った内股である。結果的に透かされて一本負けとなったが、小手先の技の応酬や駆け引きが目立った試合のなかで、“一本ねらい”の姿勢は大いに評価されよう。(渡邉)

文責:三浦登、渡邉昌史(広報委員)
写真提供:ウメダフォトスタジオ

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